ある秋の週末、少し気分転換にと思って車でドライブに出かけました。特に目的地は決めておらず、ただ心地よい風を感じながら田舎道を進んでいました。いつもなら行かない方向にハンドルを切っていたのですが、ふと目に留まったのは、こぢんまりとした小さなペットショップの看板でした。
「ペットショップ…?こんなところにあったっけ?」
特にペットを飼うつもりはなかったし、動物にもそこまで興味があるわけではなかった。でも、なぜかその瞬間、足が自然に動いて店に入っていました。おそらく疲れていたのもあって、癒しを求めていたのかもしれません。
店内に入ると、すぐに犬や猫、鳥たちの姿が目に入りました。でも、私がなぜか気になったのは、店の奥にあったショーケースの一角。そこに、真っ白な毛並みのうさぎが一匹、静かに座っていました。値段を見ると、他の動物より少し高め。でも、そのうさぎは、何とも言えない不思議な魅力を放っていたんです。目が合った瞬間、なぜか心の中で「この子だ」と強く思いました。
「触ってみますか?」店員さんが優しく声をかけてくれ、私は少し戸惑いながらもうさぎを抱かせてもらいました。ふわふわとした毛と、その温かい感触に心がほぐれていくのを感じました。驚いたのは、うさぎが全く抵抗せず、静かに私の腕に身を委ねてくれたことです。まるで、初めから私を待っていたかのように。
その瞬間、私の中で何かが決まりました。「この子を連れて帰ろう」と。特に理由はなく、ただその場の感覚に従っただけでした。
家に連れて帰ったうさぎには「モカ」という名前をつけました。どことなくコーヒー豆のような優しい香りを感じたからです(実際にはそんな匂いはしないんですが、なぜかそう思えてしまったんです)。モカとの生活は、最初は戸惑いながらも、とても温かいものになりました。
特に印象的だったのは、ある日仕事でかなり疲れて帰ってきた時のこと。私はいつものようにソファに倒れ込みました。その日は本当にしんどくて、頭の中がいっぱいだったんです。すると、モカがいつも以上に私の膝の上に乗りたがってきました。仕方なく抱き上げたのですが、モカはそのまま丸まって、すぐに寝息を立て始めました。その瞬間、全ての疲れがすっと消えていくような感覚に包まれたんです。あの温かい体を感じていると、まるでモカが「大丈夫だよ」と言ってくれているような気がしました。
他の日も、不思議なことがありました。モカが妙に活発で、部屋中を元気に跳ね回っていたんです。普段はもっと静かに過ごしているのに、その日は何かに取り憑かれたように飛び跳ねていました。正直、ちょっと面倒だなと思いながらも、その無邪気な姿に、いつの間にか私まで笑顔になっていました。今思うと、あの日も私が少し気分が落ちていた日で、モカが私を元気づけようとしてくれていたのかもしれません。
モカはただのうさぎだと思っていました。でも、何か不思議な力があるように感じる瞬間が多々ありました。たとえば、私が悩んでいるときや落ち込んでいるとき、必ずモカは私のそばに寄り添ってくれる。まるで、私の気持ちを察知しているかのように。実際に言葉を交わすことはないけれど、心で通じ合っているような、そんな感覚を持つことが増えました。
モカが体調を崩したときは、本当に心配で、すぐに動物病院に連れて行きました。診察を受けているモカの姿を見ていると、まるで自分の家族の一員を見守っているような気持ちになり、涙がこぼれそうになったこともありました。それほどまでに、モカは私にとって大切な存在になっていたのです。
一緒に過ごすうちに、モカはただのペットではなく、私の心の支えになっていきました。彼がそばにいるだけで、疲れやストレスが和らぐ。些細なことで笑顔になれる。モカがいなければ、今の私はこんなに穏やかな気持ちで過ごせていなかったかもしれません。
この出会いが偶然なのか、それとも何か特別なものだったのかは分かりません。ただ一つ確かなのは、モカが私の生活に小さな奇跡をもたらしてくれたということ。そして、その奇跡は今も毎日のように続いています。
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