週末、私は久しぶりに一人でドライブに出かけた。特に目的地はなかったが、日々の喧騒から逃れて、静かな田舎道を走りたくなったのだ。風が心地よく、窓を少し開けて車を進めると、どこか懐かしい気持ちが湧いてきた。
しかし、山道に差しかかる頃、急に視界が曇り始めた。いつの間にか濃い霧が辺りを包み込み、車のヘッドライトをつけても、わずか数メートル先しか見えない状態だった。
「こんなところで霧なんて…」
不安を感じながらも、霧の中を慎重に車を進めたが、ふと、周囲の風景が奇妙に変わっていることに気づいた。道路も、木々も、すべてが白黒に染まっていたのだ。カラーだった世界が、まるで古いモノクロ映画の一場面に変わったように、すべての色が消えていた。
「これ…またか…?」
以前、突如として迷い込んだあの白黒の世界のことを思い出した。まさか再び、同じ現象が起こるとは思っていなかった。
さらに奇妙なことに、車のエンジンが突然止まり、全く動かなくなった。仕方なく車を降り、辺りを見渡すが、街灯もなく、ただ白黒の森が静かに佇んでいるだけだった。どこかで鳥の鳴き声が聞こえるはずだったが、その音もなかった。
「また、この世界に…」
歩き出そうとしたが、足元が妙に重く、空気自体も異様に冷たく感じた。あたりは不気味に静まり返っていて、人の気配どころか、風すら止まっているようだった。前回のことを思い出し、恐怖がじわじわと胸に広がる。
しばらく歩き続けると、かすかに光が見えてきた。どうやら町のようで、建物が並んでいるが、それもすべて白黒だった。窓には何も映っていないし、音もない。まるで、すべてが時間の止まった世界に閉じ込められているような不気味さだった。
「ここは、どこなんだ…?」
恐怖と不安が混じり合いながらも、何とか人を探そうと町を進む。しかし、誰一人として姿は見えない。ただ、無機質な建物だけが並び、通りには影さえも存在していない。まるで、この世界そのものが僕を拒んでいるかのようだった。
ふと、視線の先に動く何かを捉えた。急いでその方向に進むと、一軒の家が目に入った。奇妙なことに、その家だけがほんの少し色を持っているように見えたのだ。心臓が高鳴る中、ドアを叩いた。
すると、前回と同じく、扉がゆっくりと開き、中から一人の女性が現れた。彼女は、以前と同じ鮮やかな色彩を持っていた。
「また、ここに来てしまったのね…」
彼女は穏やかに微笑みながら、私にそう言った。
「どうして…またこんな場所に…?」
私は戸惑いながらも尋ねたが、彼女は静かに首を振った。
「この世界は、人が迷い込む場所なの。自分の中の恐怖や迷いが、ここに引き寄せるのよ。でも、心配しないで。私がまた、元の世界に戻してあげる。」
彼女は前回と同じように、手を差し出してきた。その手に触れると、温かい感覚が再び体に広がり、周囲の白黒の世界がゆっくりと色を取り戻していった。
家の外に出ると、空には青空が広がり、町もいつもの色彩を取り戻していた。振り返ると、彼女はドアの前に立ち、優しく見送っていた。
彼女はゆっくりとドアを閉め、再び姿を消した。
現実に戻った安堵感が広がる中、僕は心の中で何かが変わった気がした。二度とあの世界に迷い込まないようにと、彼女の言葉を噛みしめながら、静かに車に戻った。
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