卒業アルバムが配られたその日、高校生活の思い出がぎっしり詰まった一冊を手にした私は、懐かしさに浸っていた。クラス写真を見ていると、友人たちとの楽しかった日々が鮮やかに蘇ってくる。笑顔を浮かべるクラスメイトたちの顔を一つ一つ確認し、思い出話をするのがその日の放課後の恒例だった。
その日、教室では自然と卒業アルバムの話題で持ちきりだった。みんなが自分の写真を見ては笑い合い、「この写真ひどいな！」とか「私、変な顔してる！」などと、にぎやかに盛り上がっていた。
しかし、そんな楽しいひと時が、ある一枚のクラス写真で急にざわめきに変わった。
「ねぇ、ちょっとこの写真、変じゃない？」
それは、クラス全員で撮影した集合写真だった。前列に座っている生徒、後列に立っている生徒、先生が端で微笑んでいる。ぱっと見は何の変哲もない普通の写真だったが、誰かがその写真に目を凝らし始めると、教室全体に緊張が走った。
「この人…誰？」
その場にいた全員が一瞬静まり、写真を覗き込んだ。確かに、その集合写真には見覚えのない「誰か」が写り込んでいた。後列の真ん中あたり、ちょうど3列目に立っている生徒。そこには、いるはずのない生徒が、まるで当然のようにクラスメイトたちの間に立っていたのだ。
「これ、誰だっけ？こんなやついたか？」
誰もその人物が誰なのか、思い出せなかった。写真の中のその生徒は、ぼんやりとした表情で、他のクラスメイトたちと同じようにカメラに向かって立っている。しかし、クラスの誰一人、その人物に心当たりがなかった。
「まさか、誰かのいたずらじゃない？」と誰かが冗談半分で言ったが、写真をよく見れば見るほど、その人物がクラスにいたはずがないことは明らかだった。顔立ちもどこか不自然で、他の生徒たちとは微妙に違和感があったのだ。
「もしかして、これって幽霊？」と、別の生徒が冗談っぽく言ったが、教室の中には一瞬だけ不穏な空気が流れた。
その日は、その謎の生徒についてみんなで話し合い、誰も知らないことが確認された後も、特に大事にはならず、話題は次第に別の話へと移っていった。確かに奇妙だったが、特に怖い出来事が起こったわけでもなく、ただの「不思議な思い出」としてみんなの記憶に残った。
時が経ち、卒業して何年も経った後、同窓会で再びその話題が上がった。
「あの写真、今思い出しても変だったよな。結局、あの子は誰だったんだろう？」
みんなで集まって話しているうちに、再びその卒業アルバムが開かれ、謎の人物が写ったクラス写真が回された。しかし、誰もその写真に特に不気味さを感じることはなく、むしろ「奇妙な思い出話」として笑い飛ばされていた。
「あれって、結局何だったんだろうね。でも、こういうことってあるんだな」と、皆がそう納得していた。
その人物が誰だったのか、何故そこに写っていたのか、真相は結局わからないままだったが、それはただの一時的な話題で終わり、日常に戻っていった。心霊写真のような怖さではなく、ただの奇妙な一枚の写真として、みんなの心に残り続けている。
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