亡き父の卒業アルバムに書かれたメッセージ…寄せ書きが導いた不思議な幸運の物語
父が亡くなったのは、私が大学を卒業して間もない頃だった。突然の出来事に家族は深い悲しみを抱え、私も日々の生活の中で父の不在を痛感していた。父は厳しくも優しい人だったが、私はどちらかと言えば父とあまり親しく会話をすることが少なかった。だからこそ、父の遺品を整理している時、彼の若い頃の姿や思い出に触れる機会は、私にとって貴重なものだった。
ある日、実家の片付けをしていた時に、父の卒業アルバムを見つけた。古びた革張りの表紙は、何年も時が経っていることを物語っていたが、どこか大切に保管されていたようで、状態は良かった。私はそれを手に取り、父が学生時代にどんな友人と過ごしていたのか、どんな学校生活を送っていたのかを知りたくなり、ページをめくってみた。
そこには若かりし頃の父が、クラスメイトたちと笑顔で映っている写真があった。今まで見たことのない、無邪気で明るい父の表情を見て、少し驚いた。同時に、こんなふうに彼が青春を謳歌していたのだと思うと、親子という関係だけではない、一人の若者としての父を感じることができて、心が温かくなった。
そして、アルバムの最後のページには、父のクラスメイトたちからの寄せ書きがびっしりと書かれていた。それぞれが将来への期待や別れの言葉を書き残していたが、特に目を引いたのは、ある一人のクラスメイトが書いたメッセージだった。
「○○（父の名前）へ
いつか困難な時が来るだろう。でも、その時は、自分を信じて、前を向いて歩き続けろ。きっと光が見えてくる。お前ならできる。どんなに辛くても、いつもお前には仲間がいるんだ。頑張れ！」
このメッセージは明らかに父に向けられたものだ。しかし、なぜかその言葉が、私自身にも強く響いてきた。特に「困難な時が来る」という一文が、今の自分に向けられているように感じたのだ。
当時、私は仕事でスランプに陥っており、将来の不安に押しつぶされそうになっていた。自分の進むべき道に迷い、何をしても上手くいかないという焦りが募っていた。そんな時、このメッセージを読んだ瞬間、まるで父が私に語りかけているような気持ちになった。
「前を向いて歩き続けろ…か」
私はその言葉に背中を押された気がした。そして、それを信じてみようと思い直した。父が私に言ってくれているような気持ちで、どんなに辛い時でも、仲間がいること、自分を信じることを思い出し、心の中に刻み込んだ。
不思議なことに、それからというもの、少しずつ物事が好転し始めた。職場でのプロジェクトが思い通りに進むようになり、周囲の協力も得られるようになった。行き詰まっていた企画も順調に進み、上司からの評価も上がっていった。振り返ってみると、父の卒業アルバムを見つけた時点から、何かが変わり始めたのだ。
「お前ならできる」という言葉は、毎日思い出す度に私を励ましてくれた。もちろん、父が直接書いたものではないにせよ、あの寄せ書きの言葉が、私に力を与えてくれたことは間違いない。
さらに不思議なことが起こった。数ヶ月後、私は偶然にも父のクラスメイトの一人と再会する機会があった。彼は年配になっていたが、昔の父の話を聞かせてくれ、当時のエピソードをいくつか語ってくれた。その中で、あのメッセージを書いた人物についても話が出た。
「○○君にはいつも力強く生きてほしいと思っていたんだ。彼は誰にでも優しいけど、自分のことをなかなか信じ切れないところがあったからね。」
その言葉を聞いた瞬間、私は胸が熱くなった。そして、自分が父の息子であると強く思った。あのメッセージは、父宛のものだったが、まさに私が必要としていたものであり、父と私の似ているところが重なった気がした。
今でも、私は父の卒業アルバムを大切に保管している。そして、時々その寄せ書きを見返す度に、父のクラスメイトたちの言葉が私に語りかけてくるような気がする。それは、人生の困難を乗り越えるためのメッセージであり、いつも前を向いて進むための力となっている。
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