怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

笑顔の心霊写真がもたらした奇跡 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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沙織は、7歳の息子・直人が病に伏せる姿を前に、途方に暮れていた。数週間前に風邪をひいたのがきっかけだったが、症状は次第に悪化し、医者の治療もなかなか効果が出なかった。病院通いが日常となり、元気だった直人が、今ではほとんどベッドから動けなくなってしまった。

「お母さん、僕、治るかな…?」直人は弱々しい声で沙織に尋ねた。その言葉を聞くたびに、沙織の心は引き裂かれる思いだった。彼女は励ますように微笑んで頷いたが、その笑顔の裏には深い不安が潜んでいた。

そんなある日、沙織は古い写真アルバムを整理していた。家族の思い出を振り返ることで、少しでも心を落ち着けようとしていたのだ。アルバムの中には、数年前に亡くなった沙織の母――直人の祖母の写真もたくさん残っていた。優しい笑顔で、直人を抱きかかえる祖母の姿が、あの頃は当たり前だった光景として映し出されていた。

直人は祖母と特に仲が良く、まだ小さい頃はいつも祖母にべったりだった。母の死を直人にどう伝えるか迷った時もあったが、直人は幼心に彼女の死を理解し、それ以来、彼女の名前を口にすることはほとんどなかった。

沙織は、その中の一枚、直人と祖母が一緒に写っている写真を見つめて、ふと直人に見せてあげようと思った。少しでも元気づけられればという思いから、彼女はその写真を手に取り、病床にいる直人に見せた。

「直人、これ、覚えてる?」沙織は笑顔を作りながら、写真を差し出した。

直人はゆっくりとその写真を見つめたが、すぐに何かを感じ取ったように目を大きく見開いた。

「おばあちゃんが、笑ってる…」

沙織は一瞬驚いた。もちろん写真の中の祖母は微笑んでいたが、直人のその言葉にはどこか現実味が感じられた。そして、よくよくその写真を見直してみると、そこには信じられない光景が写っていた。

写真の中の祖母の笑顔は、明らかに以前とは異なり、より鮮明で、そして今まさに生きているかのように温かみがあったのだ。まるで祖母が、写真の中から直人に向かって笑いかけているかのようだった。

「お母さん、ほんとだ…おばあちゃんが笑ってる。それに、僕に向かって何か言ってるみたい…」

直人は、弱々しかったはずの声がどこか力強くなっていた。そしてその瞬間から、直人の体調は徐々にではあるが、明らかに良くなり始めた。

数日後、直人はベッドから起き上がり、歩けるようになった。医者も首をかしげるほどの回復ぶりで、治療の効果が出たと説明されたが、沙織は心の中で違う何かを感じていた。あの写真に写る祖母の笑顔が、直人に何かをもたらしたのだと確信していた。

直人は元気を取り戻し、以前のように笑顔を見せるようになった。そして時折、あの写真をじっと見つめ、「おばあちゃんが僕を見守ってくれてるんだ」と沙織に言うのだった。沙織もそれを聞くたびに安心し、写真の中の祖母の笑顔に感謝の気持ちを抱いていた。

あの一枚の心霊写真は、単なる不気味な存在ではなく、家族の絆を超えた奇跡をもたらすものだった。亡くなった祖母の笑顔が、今もなお直人を優しく包み込んでいるのだと、沙織は信じて疑わなかった。



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