日常的に自撮りをするのが好きな私は、特におしゃれなカフェや景色の良い場所を見つけると、ついカメラを向けてしまう癖があった。ある休日、久しぶりに自然の中でリフレッシュしたくなり、以前住んでいた家の近くにある公園へ向かった。そこは穏やかで、静かな空気が流れる私のお気に入りの場所だった。
その公園には、私が小さかった頃、よく見かけた一人の老人がいた。彼は隣に住んでいて、毎日のようにこの公園に来ていた。いつも静かにベンチに座って、本を読んだり、空を眺めたりしていたのを覚えている。あの頃は特に親しく話すこともなく、ただ見かける程度だったが、彼がこの公園を心から愛していたことはよく伝わってきた。
その老人は、私が中学に入る頃に亡くなったと聞いた。それ以降、彼の姿を見ることはなくなったが、彼が座っていたベンチは今も変わらずその場所に残っていた。
懐かしさに浸りながら、そのベンチの近くでスマホを取り出し、景色と自分を一緒に収めるように自撮りをした。柔らかい日差しの中で、自然に囲まれた自分の姿をカメラに収めると、いい写真が撮れたと思い、満足してその場を後にした。
その夜、自宅に帰り、スマホで撮った写真を確認していると、背筋が凍るような違和感に気づいた。写真の中で、私の後ろに「ぼんやりとした人の顔」が写り込んでいたのだ。
最初は気のせいか、光の加減だと思ったが、その顔は明らかに人間のもので、しかもどこかで見覚えがあった。よくよく写真を拡大して見ると、その顔は私が子どもの頃に見かけていた「隣に住んでいたあの老人」のものだった。
「…あり得ない…」私は思わずスマホを落としそうになった。彼はすでに亡くなっている。しかも、その日撮影したのは、彼がいつも通っていた公園だ。自撮りをした時には、誰もいないことを確認していた。もちろん、老人がそこにいるはずもなかった。
それでも、写真には彼の顔がはっきりと映っていた。彼は静かに、私の背後からこちらを見つめているように感じた。ぼんやりとしているが、確かに彼の特徴的な顔立ちがそこにあった。
「これって、心霊写真…?」私の頭は混乱し、恐怖で一杯になった。しかし、不思議とその顔には怖さだけでなく、どこか懐かしさや安堵感も混ざっていた。まるで、彼がその公園で今もなお過ごしているかのように、穏やかにこちらを見守っているように感じた。
次の日、私は再び公園を訪れ、彼がよく座っていたベンチに近づいてみた。そこに座り、彼がいつも見ていた風景を眺めながら、スマホの写真を見返した。怖いという気持ちを超えて、彼がこの場所を愛し、今もその記憶がここに残っているのだと感じると、心の中に何かが温かく広がった。
その後、その自撮り写真は消さずにスマホに保存し続けている。亡くなった老人は今もあの公園にいて、静かに時間を過ごしているのかもしれない。写真に映った彼の顔は、もう一度私に会いに来てくれたようにも思えた。
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