ベランダの観葉植物が囁く夜…不気味な声の正体がもたらした意外な感動の結末
私が一人暮らしを始めてしばらく経った頃、部屋に少し緑を加えようと思い、観葉植物を育てることにした。最初はインテリアの一部として軽い気持ちで始めたのだが、育てていくうちに愛着が湧き、日々の水やりや手入れが日課となった。
私が選んだのは、小さなベランダで育てられる、緑鮮やかな葉を持つ植物だった。丈夫で、多少放っておいても枯れることはないと聞いていたので、安心して世話をしていた。昼間はベランダの窓を開け放ち、太陽の光をたっぷり浴びさせ、夜になると窓を閉めてそのままにしておく。そんな平穏な日々が続いていた。
しかし、ある夜のことだった。寝る準備をしていた時、ベランダの方から奇妙な音が聞こえてきた。最初は、風が吹いて何かが揺れているのかと思ったが、どうも違う。音の出所をよく耳を澄まして探ってみると、それはどうやら「観葉植物」の方から聞こえてくるようだった。
「…パサ…パサ…」
音はごく微かで、まるで葉が風で揺れているような音だった。私は特に気に留めず、そのままベッドに入った。だが、次の日の夜も同じ音が聞こえた。
「…パサ…パサ…」
今度は少し大きく聞こえたため、私はベランダに出て植物をよく観察してみた。葉は元気そうで、土も乾いているわけではなかった。風もほとんど吹いていないのに、何故かその「音」は変わらず続いている。
「まあ、ただの自然の音か何かだろう」と、最初は深く考えなかった。しかし、さらに数日が経つにつれて、その奇妙な音はどんどん大きくなり、さらに不気味な方向へと変化し始めた。
ある夜、私はいつものようにベランダから聞こえる音を聞いていたが、いつもとは違うことに気づいた。それは、ただの「パサパサ」という葉が揺れる音ではなく、まるで「囁き声」のように感じられる音だった。
「…ふふ…」
小さな、かすかな声。まるで誰かが遠くから話しかけているかのような囁きだった。私は鳥肌が立ち、すぐにベランダのドアを開けて外に出た。
「誰かいるの…?」思わず声を出したが、もちろんベランダには誰もいない。ただそこにあるのは、私が大事に育ててきた観葉植物だけ。風もない、静かな夜だった。
恐る恐る植物に近づくと、再びその「囁き」が聞こえた。
「…もっと…水を…」
「え?」私は混乱した。今、確かに植物が「水を欲しがっている」と囁いたように聞こえたのだ。
さすがに気のせいだと思い、もう一度耳を澄ました。だが、今度ははっきりとした言葉が聞こえてきた。
「…育てて…私を…」
まるで植物そのものが、私に話しかけているようだった。冷たい汗が背中を流れ、足元がすくむような恐怖を感じた。しかし、その恐怖の中に、妙に落ち着くような感覚もあった。植物は決して私を脅かしているわけではなく、ただ「お願い」しているように感じられたのだ。
私は慌ててベランダのドアを閉め、その夜は何とかやり過ごした。
翌朝、恐る恐るベランダに出て植物の様子を確認したが、特に変わった様子はなく、葉も元気に茂っていた。気のせいだったのかもしれないと思い、仕事に向かったが、あの囁き声が頭から離れなかった。
その夜も同じようにベランダから声が聞こえた。今度は少しだけ冷静さを取り戻し、植物の近くに座り込んで耳を澄ました。
「…ありがとう…」
小さな、優しい声。驚くべきことに、その声は喜びのような感情が込められているように感じられた。私はすぐに気づいた。あの囁き声は、私が植物に水をやり、世話をしてきたことへの「感謝」だったのだ。
それ以来、私は恐れることなく、夜になると植物の近くに行くようになった。囁き声は不気味なものではなく、むしろ私に安心感を与えてくれるようになった。植物は、私が水をやり、愛情を注ぐことで、静かに「ありがとう」と言ってくれていたのだ。
私たちが世話をすることで、生き物は感謝を示してくれるのかもしれない。植物の囁きは、そんな不思議な絆を教えてくれた。夜になると今でも小さな囁き声が聞こえるが、それは私にとってもはや怖いものではなく、優しい日常の一部となっている。
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