「最近、またあの夢を見るんです…」
心療内科の診察室で、私は先生の前に座っていた。部屋には穏やかな音楽が流れていたが、私の心は不安で落ち着かない。先生は私の目を見つめ、柔らかい声で尋ねた。
「どんな夢なんですか?」
私は少し戸惑いながらも、深呼吸をして話し始めた。
「毎晩、誰かが夜中に訪ねてくるんです。でも、その人の顔は見えないんです。姿はないのに、確実に部屋の中にいるってわかるんです。」
先生は軽く頷き、メモを取りながらさらに質問をした。
「訪問者はどんな風に現れるんですか?」
「夢の中で、私は自分の部屋にいるんです。夜で、ベッドに横になっているんですけど、なぜかドアが開いていて、冷たい風が入ってくるんです。その風と一緒に、誰かが部屋に入ってくるんです。」
先生は私の話に耳を傾けていた。
「その訪問者の姿は全く見えないんですね。でも、何か感じるんですか?」
「はい、姿は見えません。ただ、足音が聞こえるんです。でも、すごくおかしな足音で……重いのに、ふわふわしているような音で。私はその足音を聞くと、すごく怖くなって、体が動かなくなってしまうんです。」
先生は少し考え込んだ後、優しい声で聞いた。
「その足音を聞いたとき、あなたはどんな感情を感じますか?」
「恐怖です。体が硬直して、何もできなくなるんです。そして、訪問者が私のベッドのそばに立っているのがわかるんです。姿は見えないのに、ただそこにいるって感じるんです。息遣いが聞こえることもあります。すごく荒い呼吸なんです。」
先生は頷きながら、少しメモを取って続けた。
「その訪問者は、何かあなたに対してアクションを起こすことはありますか?」
「たまに、ゆっくりと私に覆いかぶさってくるんです。でも、姿は見えない。ただ、すごく重い感じがして……呼吸ができなくなりそうで、その瞬間にいつも夢から目が覚めます。」
私は手に汗が滲むのを感じながら、話を続けた。
「目が覚めた後も、その感覚が残っていて……しばらく動けないんです。すごくリアルで……本当に誰かがいたんじゃないかって思うんです。」
先生は静かに頷き、さらに質問を続けた。
「この夢を見始めたきっかけや、現実で何か特別な出来事はありましたか?」
「最近、家で一人で過ごすことが多くて、夜に物音が聞こえるとすごく不安になるんです。何もないとわかっていても、心がざわついて……それが関係しているのかもしれません。」
先生は少し考え込み、そして穏やかな声で話し始めた。
「その訪問者は、おそらくあなたの中にある不安や孤独感の象徴かもしれません。姿が見えないということは、明確な恐怖が何かわからないことを表している可能性がありますね。あなたの心がそれを夢の形で表現しているのかもしれません。」
私は先生の言葉を聞きながら、少しだけ心が軽くなった気がした。
「そうですね……最近、自分でも何が不安なのかよくわからなくて。漠然とした恐怖が常にある感じがします。」
先生は静かに頷きながら、こう締めくくった。
「その不安を少しずつ整理していくことで、訪問者が何を意味しているのか、解き明かしていけるかもしれません。夢が教えてくれるものは、あなたの心の中にある何かですから。」
私は先生の言葉に耳を傾け、少し安心した気持ちで診察室を後にした。夜の訪問者が現れるたびに感じる恐怖は、もしかしたら自分の心の中の問題なのかもしれない、と少し思えるようになった。
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