「先生、最近ちょっと変な夢を見たんです…」
診察室に入ると、私は少し不安そうに椅子に腰を下ろした。室内はいつものように穏やかで、静かな音楽が流れているが、何かを言い出すのがためらわれた。先生は私の表情を見て、静かに促してくれた。
「どんな夢だったんですか?」
私は少し考え込んでから、話し始めた。
「夢の中で、私は見知らぬ森の中にいたんです。辺りは薄暗くて、木々がすごく大きくて不気味な感じがしたんですけど、不思議と怖くなかったんです。」
先生はメモを取りながら頷いた。
「それで、その森で何か特別なことが起きたんですか?」
「はい、突然目の前に、巨大なウサギみたいな生き物が現れたんです。でも、そのウサギ、普通じゃなくて……人間みたいに二足で立っていて、しかもしゃべるんです。」
先生は少し驚いた表情を浮かべながら、さらに問いかけた。
「しゃべるウサギですか?それはなかなか奇妙ですね。そのウサギは何を言ったんですか?」
「そうなんです。でも、なぜか怖くなかったんです。そのウサギが私に向かって、"悩みを聞いてやろうか?"って言ってきたんです。普通、そんな状況なら怖がると思うんですけど、なぜか夢の中では自然にその話を受け入れていて……」
先生はさらにメモを取りながら続けた。
「それで、あなたはそのウサギに悩みを相談したんですね?」
「そうなんです。でも、相談した内容がすごく変だったんです。『どうやったら頭から虹を出せるようになるか』って悩みを話していたんです。意味がわからないんですけど、その時は真剣に悩んでいたんです。ウサギも真剣に考え込んで、"それには特別な草が必要だ"って言い出して……」
私は話しながら、夢の中でのその奇妙なやり取りを思い出していた。
「ウサギは、その草を探しに行こうって言って、私をどんどん森の奥へ連れて行ったんです。木々がだんだん大きくなって、暗くなるにつれて、私はどんどん不安になったんです。でも、ウサギは気にするなって感じで、ずっと前を歩いていて……その瞬間、ふと、自分がどこに向かっているのかわからなくなったんです。」
先生は少し考え込んでから、優しく問いかけた。
「そのとき、どんな感情が湧いてきましたか?不安が強くなったんでしょうか?」
「うーん、不安というよりも、迷子になるんじゃないかっていう感覚でした。でも、ウサギは全然迷わずに進んでいて、なんだか私よりも頼もしく感じたんです。結局、その草は見つからないまま、途中で夢が終わってしまったんですけど……。」
私は少し戸惑いながら言葉を続けた。
「目が覚めたときは、なぜこんな奇妙な悩みをウサギに相談したのかが理解できなくて、でもすごくリアルに感じたんです。」
先生は深く頷き、少し考えてから話し始めた。
「夢の中で奇妙なことが起きても、あなたが自然にそれを受け入れていたのは、現実の生活の中で何か制約のない自由な感覚を求めているのかもしれませんね。また、虹を頭から出すという相談は、何か創造的なことや、表現の欲求を象徴しているのかもしれません。」
私は先生の言葉に耳を傾けながら、少しだけその夢の意味がわかりかけたような気がした。
「そうかもしれません……最近、仕事で創造的なことを求められることが多くて、でもなかなか自分のアイディアが出てこないことに悩んでいたんです。もしかしたら、それが影響していたのかもしれません。」
先生は穏やかに微笑みながら、優しい声で言った。
「そのウサギは、もしかするとあなたの中の創造力や解決のヒントを象徴しているのかもしれませんね。夢は、時に私たちが現実で気づかない部分を教えてくれるものです。ウサギとの対話を通して、何か新しい視点が見えてくるかもしれません。」
私は先生の言葉を胸に、診察室を後にした。奇妙な夢の中のウサギとの会話は、ただの幻想ではなく、もしかしたら自分の中にある何かを伝えようとしていたのかもしれないと感じ始めていた。
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