田中雄介は、書類整理の副業を始めてからかなりの月日が経っていた。これまでに不気味で奇妙な書類や資料に何度も遭遇してきたが、仕事は終わる気配がなかった。新たに運ばれてくる書類が後を絶たず、次々と整理する必要がある。雄介は淡々と作業をこなしていたが、最近はますます不気味なものが増えているように感じていた。
その日、彼はいつも通り古びた段ボール箱を整理していた。ふと、箱の奥から一枚の封筒が目に留まった。封筒は黄ばんでいて、まるで長い間忘れ去られていたかのようだった。表には何も書かれていなかったが、妙に重く、まるで中に何かが詰まっているような感触があった。
仕事上中身を見なければならないが、この時は好奇心が抑えられないのもあった。
雄介はその封筒を開けて中身を取り出した。中に入っていたのは数枚の写真だった。だが、写真の表面を見た瞬間、彼はその手を思わず震わせた。
目次
写真の中身
写真はどれも普通の風景を写したもののようだった。最初に目に入ったのは古い廃墟の建物。窓は割れ、壁は崩れかけていて、見るからに長い間人が立ち入っていないことが分かった。だが、その写真には何か異様なものがあった。
よく目を凝らしてみると、窓の奥にぼんやりとした人影が浮かんでいた。最初はただの光の加減か、写真の不具合だと思ったが、その影は明らかにこちらをじっと見つめているようだった。雄介は冷たい汗が背中を伝うのを感じた。
次に手に取った写真は、森の中の様子を写していた。木々がうっそうと生い茂り、薄暗い雰囲気が漂っている。だが、写真の中央には、まるで木の陰からこちらをじっと見つめている何かが写っていた。黒い影のような存在で、顔のようなものは見えないが、その場所に何か「在る」ことは間違いなかった。
「これは…ただの写真じゃない…」
雄介は心の中でそう呟きながらも、さらにもう一枚の写真を手に取った。この写真は、かつて住んでいた古い一軒家を写したものだった。家の前に写っているのは普通の家族写真のように見えた。しかし、家族の後ろの窓に目を向けた瞬間、雄介は血の気が引いた。
窓の中に、まるで人間ではない異形の顔が写り込んでいた。目は大きく見開かれ、口は何かを叫んでいるように歪んでいた。その顔は家族写真の中に不自然に浮かび上がり、まるで家の中からその家族を呪っているかのようだった。
雄介はその写真を見つめながら、ぞっとする恐怖に襲われた。これらの写真はただの心霊写真ではなく、何か強い悪意を持った存在が写り込んでいるように感じられたのだ。
最も恐ろしい写真
最後に雄介が手に取ったのは、一番薄汚れた写真だった。その写真を見た瞬間、彼の心臓は一瞬止まりそうになった。写真に写っていたのは、古い倉庫だった。倉庫の風景は、まるで今にも崩れ落ちそうなほどに荒れ果てており、錆びついた棚や壊れかけた機材が散乱していた。
しかし、最も不気味だったのは、倉庫の隅にぼんやりとした人影が写り込んでいたことだ。その人影は、まるで霧がかかったようにぼんやりとした輪郭を持ち、倉庫の壁際に立ってこちらを見つめていた。何か言いたげに見えるその姿は、雄介に異様な恐怖を感じさせた。
さらに恐ろしいことに、その人影はじっと見つめているだけでなく、次第に顔のような形が浮かび上がってきた。顔の輪郭は不気味に歪み、目は何も見えていないかのように虚ろだった。その影は、まるで生きている人間がそこに存在していたかのように、写真の中で不気味な存在感を放っていた。
「この場所…見たことがないけど、どこかで見たような気がする…」
雄介は急いで写真から顔を背け、頭を振った。不気味な倉庫の姿と人影が、彼の脳裏に焼き付いて離れない。写真をじっと見つめるだけで、何かに取り憑かれそうな感覚が彼を襲った。
封筒を元に戻す
雄介はその写真を見つめ続けることができず、急いで写真を封筒に戻した。そしてその封筒を元の箱の中にそっと置き、深呼吸を繰り返した。彼はこれまでに様々な奇妙な書類を見てきたが、この心霊写真は何かが違った。ただの不思議な現象ではなく、明確な悪意を感じたのだ。
それからしばらくの間、雄介は何度も背後を振り返り、誰もいない倉庫の隅を気にしていた。彼には、この写真に写っていた倉庫が、現実のどこかに存在し、自分がその場所に引き寄せられるような恐怖を感じていた。
だが、何かに取り憑かれたくないという強い思いから、彼はそれ以上封筒に触れることを避けることに決めた。雄介はその後も書類整理を続けたが、あの写真に写っていた異様な人影と荒れ果てた倉庫の記憶が、彼の頭から離れることはなかった。
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