私は心療内科に通い始めた理由を考えていた。ストレスが原因で夜眠れなくなったのがきっかけだった。それ以来、不安や焦りが募り、仕事にも支障が出るようになり、ついには先生に相談することになったのだ。今日も、いつも通り先生の前に座っている。
「最近、また夢を見るようになって…」
先生は穏やかに頷き、優しい声で促した。
「どんな夢ですか?」
私は少し迷いながらも話し始めた。
「夢の中で、私は全く知らない場所にいるんです。地球じゃないような場所で、赤い土と、溶岩が固まったみたいな地面がずっと続いていて……まるで世界の終末を迎えた後みたいな感じなんです。」
先生は興味深そうにメモを取りながら、続きを促した。
「それは、どんな風景なんですか?何か特に印象に残ったことは?」
「とにかく、荒れ果てた風景です。地面は割れていて、熱が残っているようにチリチリしていて……空は灰色で、太陽が見えないんです。まるでこの世界が終わった後のような、そんな感じです。」
私は少し息をつき、続けた。
「その場所を歩いていると、突然、とても気持ち悪いエイリアンのような生き物が現れるんです。体はぬめぬめしていて、目が異様に大きくて、腕が何本もあって……普通なら悲鳴を上げるくらい怖いはずなのに、夢の中では全然怖くなくて。」
先生は少し驚いた様子で問いかけた。
「そのエイリアン、何をしているんですか?何か話してくるんですか?」
「そうなんです。信じられないことに、そのエイリアンはとても紳士的なんです。声も穏やかで、私に向かって"お困りのようですね?何かお手伝いしましょうか?"って言うんです。普通ならこんな異形の生物に話しかけられたら恐怖で逃げ出すと思うんですけど、夢の中では全くそんな感情がなくて、むしろ安心感があるんです。」
先生はさらにメモを取りながら、質問を続けた。
「そのエイリアンに、あなたは何かを相談したんですね?」
「はい。相談したんですけど、その内容がすごくおかしくて……『どうやったら毎日、空からパンケーキが降ってくるようにできるか』って悩みを話してたんです。現実じゃありえない悩みですけど、その時はすごく真剣にそのことを考えてたんです。」
私は少し笑いながらも、その夢があまりにリアルだったことを思い出し、続けた。
「エイリアンも真剣に答えてくれて、『それには、空の風を操る古代の力が必要だ』って言い出したんです。で、その力を得るには、この荒廃した世界のどこかに隠された遺物を探さなきゃいけないって言うんです。すごく奇妙な状況なのに、夢の中では本当にその話を信じていて、"よし、それを探そう"って気持ちになってました。」
先生は少し考え込んでから、再び口を開いた。
「その遺物を探すというのは、あなたにとって何か象徴的な意味があるのかもしれませんね。何かを達成しようとしている気持ちや、目標が反映されているのかもしれません。その時、どんな感情が湧いてきましたか?」
「そうですね……何か大きなことに挑もうとしている感覚がありました。でも、それを達成すれば、空からパンケーキが降ってくるという、なんだか不思議な達成感を求めていたんです。エイリアンも"頑張ってください"って応援してくれていて……普通なら考えられないことが、夢の中ではすごく自然に感じたんです。」
私はその場面を思い出しながら、少し戸惑った表情を浮かべた。
「ただ、その遺物を探し始める前に、夢は終わってしまったんです。目が覚めた時、なんでこんな夢を見たのか全くわからなくて……でも、不思議と気持ち悪さは全然残っていなかったんです。」
先生は深く頷きながら、少し考えてから優しい声で話し始めた。
「そのエイリアンは、もしかするとあなたの心の奥にある不安や、未知への好奇心を象徴しているのかもしれません。空からパンケーキが降ってくるというのも、何か非現実的な願望や、日常生活では叶えられない夢を反映しているのかもしれませんね。そして、その遺物を探すという冒険は、あなたが何か大切なものを探していることの象徴かもしれません。」
私は先生の言葉を聞きながら、少しだけその夢の意味がわかりかけたような気がした。
「そうかもしれません……最近、仕事や生活の中で、何か達成感を得たいと思っているんですけど、それがなかなかうまくいかなくて。でも、夢の中ではそれが不思議と叶う感覚があって……」
先生は穏やかに微笑みながら、続けた。
「夢は、私たちが無意識の中で感じていることや、現実で解決できない問題を映し出すことがよくあります。そのエイリアンとの対話も、あなた自身の心の中の声かもしれませんね。夢の中のシチュエーションが奇妙であるほど、そこに隠された意味が大きいのかもしれません。」
診察室を出る時、私はふと夢の中でのエイリアンとの対話を思い出した。滅亡した世界での奇妙な冒険が、もしかしたら私の心の中にある何かを示唆しているのかもしれない。そして、その謎を解き明かすためには、もう少し自分自身に向き合う必要があるのかもしれないと感じた。
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