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異次元の地図:田中雄介の書類整理 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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田中雄介は、書類整理の副業に雇われてからかなりの時間が経っていた。これまでに膨大な量の書類を仕分けし、多くの奇妙な書類にも出会ってきた。だが、新しい書類が定期的に運ばれてくるため、彼の仕事が終わる気配はまだまだなかった。特に最近では、ますます古びた奇妙な書類が増えているように感じていた。

ある日、いつものように倉庫の奥で作業をしていた雄介は、一風変わった手書きの地図が入った封筒を見つけた。封筒には「極秘」と大きく赤字で書かれており、封を開けると、中には数枚の地図が入っていた。その地図は、まるで異世界を描いたかのように見えた。

雄介はその地図を手に取り、詳細を読み込むことにした。

地図の内容

地図は一見、普通の地形図に見えたが、じっと見つめていると、その不自然さに気付かされた。描かれている場所は、現実には存在しないものばかりだった。大きな湖が真ん中に描かれており、その周囲には奇妙な生物や、非現実的な建物が点在していた。

地図の詳細

1.黒い湖
地図の中央には「黒い湖」と書かれた巨大な湖があった。湖の水は黒く、不気味なほど静かに広がっているように描かれていた。湖の端には「入るな」と手書きで警告文が書かれている。さらに、湖の周りには奇妙な記号が並んでおり、まるで何かを封じ込めるかのように描かれていた。

2.歪んだ塔
湖の北側には「歪んだ塔」と書かれた細長い建物が立っていた。塔は現実ではあり得ないほどにねじれており、まるで重力に逆らっているかのようだ。その周囲には奇妙な生物がいくつも描かれていた。巨大な鳥に似た生き物や、足の数が多すぎる獣の姿が緻密に記されている。

3.迷いの森
湖の南側には「迷いの森」と書かれた場所があった。この森は入り組んだ道が何重にも描かれており、一度入ると二度と出てこれないとでも言わんばかりに錯綜した道が延々と続いている。木々の間には目のようなものが描かれており、何かがこちらを見ている感覚に襲われる。

4.逆さの山
湖の東側には「逆さの山」と呼ばれる不思議な山が描かれていた。通常の山とは違い、この山は上から地面に向かって突き刺さるように逆さに描かれていた。山の頂上(実際には下側)が地面に接している形で、頂には不気味なシンボルが記されている。

5.時空の裂け目
湖の西側には「時空の裂け目」と書かれた場所があり、地図上では歪んだ渦巻きのように描かれていた。この場所は、時間や空間が狂う場所とされているらしく、近づけば二度と元の世界には戻れないという注釈が書かれていた。

雄介はこの地図を見て、これまでに見たどの書類とも違う異様な雰囲気を感じ取った。特に奇妙だったのは、地図の端に記された手書きの注釈だった。

手書きの注釈

「この地図は、通常の地図とは異なります。地図に記された場所は現実には存在しないように見えますが、もしあなたがこの地図に強い関心を抱き続けると、いつの日かその場所に足を踏み入れることになるかもしれません。これを手に取った者は、地図に描かれた運命を避けることはできません。注意せよ。」

この注釈を読んだ雄介は、冷たい汗が額を伝うのを感じた。地図そのものも不気味だったが、その運命のような警告文は、彼に何か不吉なことが起こる予感を強く抱かせた。

地図の変化
地図を読み込んでいるうちに、さらに奇妙なことが起こった。地図の描かれた紙が微かに震え、まるで生き物のように動いているかのような感覚が伝わってきた。さらに、よく見ると、最初に見たときにはなかったはずの細かい道が、新たに描き加えられているようだった。

「こんなことがあり得るのか…?」

雄介は疑いの目を持ちながらも、好奇心が強く、地図を手放すことができなかった。新たに描かれた道は「出入口」と記されており、その道がどこかに続いているように見えた。

最後の不安

雄介はしばらくその地図を見つめ続けたが、次第に胸の中に不安が広がっていった。異次元の地図に記された場所は、ただの空想や妄想ではないように思えた。もしかすると、この地図に描かれた世界は実在するのかもしれないという考えが彼の頭をよぎった。

ふと、雄介は周囲を見渡した。薄暗い倉庫の中にいるはずなのに、どこかで誰かに見られているような感覚に襲われた。彼はその感覚に耐えきれず、地図を封筒に戻し、元の場所にしまうことにした。

「こんなもの、触るべきじゃない…」

地図を元の封筒に戻してから、雄介は深いため息をついた。異次元の地図が持つ不気味な力を感じながらも、これ以上深入りすることは避けた方がいいと直感的に思ったのだ。

普段の生活に戻る

その後も、雄介はいつも通り書類整理の仕事を続けたが、あの異次元の地図のことが頭から離れなかった。もし、あの地図に描かれた場所が本当に存在するなら、自分もその世界に引き込まれてしまうのではないかという恐怖が、時折彼を襲った。

しかし、地図に対する興味と恐怖の間で揺れ動きながらも、彼は現実世界に留まることを選んだ。

彼は、倉庫での作業を続けながら、地図に記された運命を避けることができたことに、わずかな安堵を覚えていた。

だが、あの地図の不気味な詳細と、微かな変化の記憶は、彼の心にいつまでも深く刻まれたままだった。



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