俺は、深夜のオフィスビルの警備員をしている。ビルの警備室には、ビル全体を監視するための防犯カメラの映像が並んでいて、数十台のモニターが一斉に動いている。普段は警戒すべき異常はほとんどなく、たまに夜遅くまで残業している社員がいるくらいだ。
その夜も、特に変わったことはなかった。午前2時を過ぎ、警備室でコーヒーを飲みながらモニターに目をやっていると、一つだけ違和感を感じる映像があった。大画面に映し出されているカメラの一つに、妙に美しい風景が映っている。
「こんな場所、ビルの中にあったか?」
その映像は、オフィスビルの一室を映しているはずのカメラだった。しかし、そこに映っていたのはまったく違う場所——緑豊かな森の風景だった。青空が広がり、木々の葉が風に揺れている。鳥の鳴き声まで聞こえてきそうなほど、リアルな風景だった。俺は目を疑い、他のモニターと見比べてみたが、どれも普通のオフィスや廊下の映像だ。おかしい。こんな映像が防犯カメラに映るはずがない。
「何かの誤作動か?」
そう思い、映像を確認しようとカメラ番号を特定し、その場所へ行ってみることにした。問題のカメラは、7階の会議室を映しているはずだった。俺は急いでエレベーターに乗り込み、7階へ向かった。
7階に着き、その会議室の前にたどり着いた。ドアを開けると、当然そこには普通の会議室があるだけだった。薄暗い蛍光灯の下、テーブルと椅子が整然と並び、何の変哲もないオフィスの一部屋だ。だが、モニターには依然として、あの美しい風景が映っている。
俺はカメラを確認するため、天井に取り付けられた防犯カメラの位置を見上げた。カメラは正常に作動しているようだった。カメラ自体に異常はなさそうだ。なのに、モニターには現実には存在しない風景が映り続けている。
「これは一体どういうことだ?」
警備室に戻り、もう一度モニターを確認すると、その風景はさらに鮮明になっていた。今度は森の中に古びた洋館が映っている。美しい緑の中に佇むその建物は、まるで絵画のようだった。俺は思わず息を呑んだ。まるでカメラが別の世界を映しているかのような映像だった。
不気味さを感じつつも、俺は映像をじっと見つめ続けた。すると、森の中に誰かが歩いているのが見えた。白い服を着た女性が、ゆっくりとカメラに向かって近づいてきた。顔ははっきりとは見えないが、長い髪が風に揺れているのが分かる。
その瞬間、俺の背筋に冷たいものが走った。この映像はどこから映されているのか、そしてこの女性は一体誰なのか。恐怖が徐々に広がっていった。
さらに奇妙なことに気づいたのは、その女性がゆっくりとカメラに向かって歩いてくるたびに、映像が少しずつ暗くなり始めたことだ。最初は明るかった風景が、徐々に夕暮れのように陰り始め、やがて薄暗い夜の風景へと変わっていく。
「これはまずい…」
俺は直感的にそう感じた。急いでカメラの操作を試みたが、どんなにボタンを押しても映像は切り替わらない。まるでそのカメラが、何かに取り憑かれたかのように固定されていた。
そして、ついにその女性がカメラのすぐ前に立った。顔ははっきりとは見えないが、長い髪の間からこちらをじっと見つめているのがわかった。俺はモニターの前から一歩も動けず、ただその映像に釘付けになっていた。
次の瞬間、モニター全体が一瞬真っ暗になり、再び映像が映った時には、カメラには元の会議室が映っていた。美しい風景も、女性も、すべて消えていた。
俺はしばらくその場で呆然としていた。何が起こったのか、理解できなかった。あれは何だったのか?俺は今でも、その答えを見つけられずにいる。だが、その夜以来、あのカメラをチェックするたびに、あの森と女性がまた映るのではないかと、今でもビクビクしながら見ているんだ。
■おすすめ
マンガ無料立ち読み
マンガをお得に読むならマンガBANGブックス 40%ポイント還元中
1冊115円のDMMコミックレンタル!
人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】
ロリポップ!
ムームーサーバー
新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp
ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |