俺は、夜中にパソコンを使うのが日課になっている。仕事で忙しい昼間とは違い、夜は静かで集中できる時間だ。特に何か大きなトラブルもなく、順調に作業を進めていた。だが、ある夜、いつもとは違う異様な出来事が起こった。
その日も、仕事のデータを整理していた。パソコンの調子は問題なく、サクサクと動いていたが、ふと画面に違和感を感じた。何かが一瞬チラついた気がしたのだ。目を凝らして見てみたが、特に異常はなさそうだった。気のせいだろうと思い、再び作業を進めていると、今度ははっきりと画面にエラーメッセージが表示された。
「ERROR: 存在しないフォルダにアクセスしました。」
「何だこれ…?」
そのメッセージに見覚えはない。普段出るような単純なエラーとは違い、フォルダにアクセスした覚えもないし、そもそも存在しないフォルダなんて意味が分からない。俺は、エラーメッセージを無視して閉じようとしたが、メッセージは消えない。
さらに不気味なことに、そのメッセージが消えないどころか、パソコンが何かを自動で動かしているようだった。勝手にウィンドウが開き、見たことのないフォルダが表示された。フォルダ名は「memories」という不気味に響くものだった。
「memories…? そんなフォルダ、作った覚えはないんだけどな。」
俺は、恐る恐るそのフォルダを開いた。中には無数のファイルが並んでいたが、そのファイル名は全て日付のような形式になっていた。最も古いものは、俺がまだ幼かった頃のものだ。だが、そんな日付のファイルをパソコンに保存した覚えはまったくない。
気になって、1つのファイルを開いてみると、突然画面いっぱいに古い白黒の写真が表示された。そこに写っていたのは、見覚えのある風景だった。子供の頃、家族で遊びに行った田舎の家。懐かしい光景に一瞬安心感が広がったが、すぐにある違和感に気づいた。
その写真の片隅に、ぼんやりとした人影が映っているのだ。どこかで見たことがあるような…でも思い出せない。顔ははっきりと写っていないが、その人影は俺たち家族の背後に立って、こちらをじっと見ている。
「こんな写真、持ってたか…?」
頭が混乱しながらも、次々にファイルを開いていく。どれも懐かしい思い出の写真だったが、すべてに共通して、その人影が写り込んでいることに気づいた。幼少期の誕生日、学校の運動会、旅行先の写真…すべての写真に、その同じ人影が潜んでいる。
「これは一体何なんだ…?」
不安が募る中、最後にもう一つファイルを開いた。それは動画ファイルだった。画面が真っ黒のまま、しばらく何も映らなかったが、突然、低いノイズ音と共に映像が流れ始めた。映し出されたのは、俺が今座っているこの部屋だった。
「え…?」
画面に映るのは、まさに今の俺の部屋。動画は静かに、部屋の中をぐるりと映し出していた。デスク、椅子、窓、ベッド…すべてがリアルタイムで俺の目の前にある光景と同じだった。そして、カメラがゆっくりと回り、最後にパソコンの前に座る俺自身が映し出された。
そこに写っているのは、まさしく今この瞬間の俺だ。俺は背筋が凍る思いで画面を見つめ、次に何が起こるのか分からないまま息を飲んだ。
その時、映像の中で俺の背後に、またあの人影が映り込んだ。ゆっくりと俺の背後に近づいてくるその姿が、徐々にはっきりと見えてきた。そして、その影は俺の耳元に口を寄せ、何かを囁こうとした瞬間、画面が一気に真っ黒になり、パソコンが強制的にシャットダウンされた。
真っ暗な画面に映る自分の顔がぼんやりと浮かび上がり、俺は凍りついたまま、しばらく動けなかった。
何だったんだ、今のは…?
パソコンはその後、何事もなかったかのように再起動したが、あの「memories」というフォルダは二度と見つからなかった。あの人影が何だったのか、そしてどうして俺の記憶に紛れ込んでいたのか、今でも謎のままだ。だが、あのエラーメッセージが表示された夜以来、パソコンを使うたびに、また何かが映るのではないかと警戒しながら作業を続けている。
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