怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

抜け出せない倉庫 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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俺は、長年深夜の警備員をしているが、あの夜ほど恐ろしい体験をしたことはない。

その倉庫は広大で、巨大な棚が何列も並び、昼間でも迷い込んだら簡単には戻ってこれないような迷路のような構造になっている。だが、俺は毎晩の巡回ルートを知り尽くしていた。道に迷うなんてことは、これまで一度もなかった。

その夜も、いつものように巡回を始めた。時計は午前2時を回っていたが、特に異常はなさそうだった。倉庫の照明は必要最低限しかついておらず、薄暗い中で懐中電灯を頼りに歩くのが仕事だ。広い倉庫の中を巡回していると、どこからともなく冷たい風が吹き抜けたような気がしたが、そんなことはいつものことだと思い気に留めなかった。

ところが、倉庫の奥深くに進むにつれて、何かが違うことに気がついた。普段なら簡単に把握できる通路が、なぜかいつもと違う配置に見える。いや、見えるだけじゃない。本当に通路の形が変わっているような気がしたのだ。妙な胸騒ぎを覚えながらも、少し進んでみることにした。

しかし、進めば進むほど、周囲の風景がどんどん変わっていく。見慣れた棚の配置や壁の位置が、まるでゆっくりと動いているような感覚に襲われた。普段なら右に曲がれば簡単に出口に戻れるはずが、右に曲がったはずなのにまた違う場所に出てしまう。

「おかしいな…」

俺は何度かルートを確認したが、どうしても元の場所に戻れない。何度も同じ通路を通った気がしてきた。汗がじわりと背中を流れ、いつもとは違う不安感が胸に広がっていった。何かが、俺をこの倉庫に閉じ込めようとしているような、そんな感覚が増していく。

「まぁ、落ち着けば出られるだろう」

そう自分に言い聞かせながら、もう一度通路を辿ってみた。だが、進めば進むほど、倉庫の中は深く暗くなっていく。まるで倉庫自体が俺を迷わせようと変形しているかのようだった。普通に歩いているつもりが、いつの間にか全く知らない場所に出てしまう。

そして、さらに奇妙なことが起こり始めた。遠くから微かな声が聞こえてくる。「助けて…」と囁くような声。最初は風の音だと思ったが、何度も聞こえてくる。俺は一瞬立ち止まり、耳を澄ませた。

「助けて…」

確かに聞こえる。だが、その声がどこから聞こえているのか分からない。声の方向に進もうとしても、足元がまるで粘つくような感覚に捉えられ、前に進むのがどんどん難しくなってきた。

「これはまずい…」

そう思った瞬間、懐中電灯の光が急に弱くなり、次の瞬間、完全に消えてしまった。辺りは真っ暗になり、俺は完全に孤立した気分になった。心臓の鼓動が耳の中で響き、足元からは冷たい何かが這い寄ってくるような感覚がする。

「助けて…」

また声が聞こえる。今度は、はっきりと俺のすぐ後ろからだ。

恐怖で身体が硬直し、振り返ることができなかった。何かが、すぐ背後にいる。俺はその場に立ち尽くし、どうすることもできないまま、次の一歩を踏み出す勇気が出ないでいた。

だが、意を決して一歩後ろに下がった瞬間、足が何かに引っかかり、俺はその場に転んだ。暗闇の中、地面に手をついた俺は何か冷たいものに触れた。それは滑らかで硬い感触のもので、手を離したくても、まるでその物体が俺の手を掴んでいるかのようだった。

必死に振りほどき、俺は立ち上がったが、その時、再びあの声が聞こえた。

「ここから出られないよ…」

その声は今度こそすぐ耳元で囁かれた。俺は全速力でその場から逃げ出し、倉庫の通路を何とか抜け出そうと走り続けた。心臓はバクバクと音を立て、冷や汗が止まらなかった。だが、どれだけ走っても、出口にたどり着けない。

ようやく光が見えたのは、俺が完全に疲れ果て、絶望しかけた時だった。薄暗い照明が見え、やっと出口に近づいたことが分かった。全身の力を振り絞って、何とかその光の元へたどり着いた時、俺はようやく倉庫の出口に戻ることができた。

その日以来、俺は倉庫の奥に深く入り込むことは避けている。あの場所には、何かがいる。そして、それはきっと俺が気づいていない間に、ずっとそこに潜んでいたのだ。



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