俺は、夜勤の警備員としてとあるオフィスビルを見回っている。ビル全体には防犯カメラが設置されていて、警備室にはその映像がリアルタイムで映し出されるモニターが並んでいる。基本的にはいつも通り、静かで何も起こらない夜の勤務。ところが、ある夜、不思議な出来事が起こったんだ。
その日は午前2時を過ぎた頃、いつものようにモニターを眺めていた。カメラの映像はオフィスの廊下やエントランス、階段など、何も変わらない静かな風景を映している。だが、ふと1つのモニターに目が留まった。
そのモニターには、映るはずのない映像が表示されていた。
俺は最初、見間違いだと思った。だが、そのモニターにははっきりと「接続なし」と表示されているはずだった。実際、そのカメラは数ヶ月前に故障し、カメラ自体が取り外されていたのだ。つまり、そのモニターには何も映るはずがない。それなのに、今、そこには何かが映っている。
モニターに映し出されていたのは、どこかの広い草原の風景だった。青々とした草が風に揺れ、遠くには小さな山々が見える。まるで映画のワンシーンかと思うほど、美しい風景だった。
「おかしいな…」
俺は画面を凝視し、何かの誤作動かと考えた。しかし、他のモニターは正常に映っているし、映像はリアルタイムで動いているように見える。モニターに近づいて確認するが、やはりその風景が映っている。草原の上を風が吹き抜け、葉が揺れているのがわかる。だが、そんな場所は、このビルのどこにも存在しない。
気味が悪くなり、俺はモニターの電源を一度切り、再び入れ直してみた。すると、数秒間「接続なし」と表示されたものの、またすぐに同じ草原の風景が映し出された。俺は何度か電源を切ったり接続を確認したりしたが、結果は変わらない。映るはずのない映像が消えることはなかった。
しばらくその映像を見ていると、遠くの草原に何か動くものが見えた。画面に顔を近づけてよく見ると、小さな人影が一人、ゆっくりと歩いているようだった。遠くにいるため、その人物が誰なのかはわからなかったが、その歩き方はどこかしら不自然だった。
俺は急いで他のモニターを確認したが、他のカメラはすべて通常通りのオフィスの映像を映している。その中で、唯一そのモニターだけが不思議な風景を映しているんだ。
やがて、画面に映っていた人影が少しずつこちらに近づいてきた。画質は決して高くなかったが、確かにその人物はゆっくりとこちらに向かって歩いているようだった。何故か不安が胸に広がり、俺はすぐにそのモニターの電源を再び切った。しかし、映像は何事もなかったかのように再び現れ、その人影もさらに近づいてきた。
「一体、何が起こっているんだ…?」
不安と恐怖が混じり合い、俺は急いで上司に連絡を取ろうとした。しかし、その時、モニターの中でその人影がはっきりとカメラに向かって立ち止まった。そして、その人物がこちらに向かって手を振っているのが見えた。まるで、俺に向かって「こっちに来い」とでも言っているかのように。
それ以上、見ることができなくなった俺は、急いでモニターの電源を再び切り、警備室から離れた。その後、何度かモニターを確認したが、あの風景は再び現れることはなかった。しかし、あの草原と人影が何だったのか、今でも説明がつかない。
あのモニターは、今も「接続なし」のまま静かに置かれているが、時々ふと不安になる。もしかしたら、またあの草原が映り、遠くから誰かがこちらに向かって歩いてくるのではないかと。
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