僕が今のマンションに引っ越してきたのは、ちょうど半年前のことだ。仕事の都合で都会から少し離れた静かな住宅街に住むことになり、このマンションは築年数は少し古いものの、家賃が手頃で環境も良かった。近くにコンビニもあって、普段の生活には何も不自由することはない。
最初の数ヶ月は特に問題なく、平穏な日常が続いていた。しかし、引っ越してから4ヶ月が過ぎた頃、ある夜、異変が起こり始めた。
その夜は、いつも通りリビングでテレビを見ていた。時計を見ると、深夜1時を過ぎていた。そろそろ寝ようかと思ったその瞬間、玄関のチャイムが鳴ったのだ。時間も時間だったので、少し驚いた。
「こんな時間に誰だろう?」と思いながら、インターホンを確認したが、モニターには誰も映っていない。不審に思い、しばらくその場に立ち尽くしたが、結局誰も姿を現さなかった。いたずらか何かかもしれないと思い、その夜は気にせず寝ることにした。
しかし、これが始まりだった。
それからというもの、夜中になると決まって玄関のチャイムが鳴るようになった。毎晩、深夜1時を過ぎた頃に、チャイムの音が響く。恐る恐るインターホンを確認するが、毎回誰もいないのだ。最初は偶然かいたずらだと思っていたが、回数を重ねるごとに不安が募っていった。
ある日、どうしても不気味に感じた僕は、チャイムが鳴る瞬間を狙って、玄関のドアを勢いよく開けてみた。しかし、そこには誰もいない。人影はおろか、足音一つ聞こえないのだ。マンションの廊下は静まり返り、まるで最初から誰も来ていなかったかのように感じられた。
次第に、夜中にチャイムが鳴ることが恐怖になり始め、寝る前に玄関の前で待機するようになった。だが、どんなに気を張っていても、毎回チャイムが鳴る瞬間には誰もいないのだ。まるで、誰かに見透かされているような感覚があった。
そして、ある夜。ついにそれがエスカレートする瞬間が訪れた。
その夜も深夜1時を回った頃、やはりチャイムが鳴った。これまでと同じだと思い、半ば諦めの気持ちでインターホンのモニターを確認した。だが、今度は違った。
モニターにぼんやりとした人影が映っていたのだ。最初は曇っているように見えたが、画面を凝視するうちに、その人影が徐々に鮮明になっていった。それは、一人の女性のようだった。髪は長く、白っぽい服を着ている。しかし、顔ははっきりとは映らず、ぼやけている。
僕は一瞬、怖くて動けなくなった。しかし、次の瞬間、女性の影が不意に消えた。慌てて玄関のドアを開けたが、やはりそこには誰もいなかった。
「何なんだ…これ?」僕は完全に混乱していた。確かにモニターには人影が映っていた。だが、現実には誰もいない。
その日以来、夜中に鳴るチャイムの恐怖は、僕の日常を侵食していった。毎晩、同じ時間に鳴り響くチャイム。しかし、モニターには映るはずのない人影が映り、玄関を開けても誰もいない。
ついに我慢の限界が来た僕は、管理会社に連絡を入れ、この異常な現象を伝えた。しかし、管理人は「誰もその時間に訪れていない」と言うばかりで、僕の話を信じてはくれなかった。
ある日、思い切って近所の住人にこの出来事を相談してみた。すると、年配の女性がポツリとこう言った。
「ああ…このマンション、昔はね、ここの住人が一人行方不明になったんだってさ。ずっとその部屋に住んでいた若い女性だったけど、ある日突然姿を消して…その後も、夜中にチャイムが鳴るって話は聞いていたよ」
その言葉を聞いた瞬間、血の気が引いた。
「その部屋って…どこですか?」
「確か、あんたの住んでる部屋だった気がするけどね」
僕の心臓は一瞬で凍りついた。僕の部屋で…何が起こっていたというのか?
それ以来、僕はもう夜中のチャイムが怖くて、耐えられなくなった。すぐに引っ越しを決意し、今はそのマンションから離れた場所に住んでいる。あのチャイムの音が本当に誰のものだったのか、今でもわからない。
だが、今でも時折、夜中に目が覚めると、あの時のチャイムの音が耳に残っている気がするのだ。
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