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夜中の電話:繋がらないはずの相手 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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それは、ある夜のことだった。僕はいつものように仕事を終えて、アパートに帰り、晩ご飯を食べてシャワーを浴び、ベッドに横になっていた。特に変わったこともなく、日常が続くはずだった。

夜中の2時過ぎ、突然スマホの着信音が鳴り響いた。うとうとしていた僕は、半分寝ぼけながらスマホを手に取った。ディスプレイには、「不明な番号」と表示されている。

こんな時間に電話がかかってくるなんて、誰かが間違い電話をしたんだろうと思いながらも、無意識に通話ボタンを押してしまった。

「もしもし?」

返ってくるのは、かすかな雑音と、遠くで微かに響く声のような音。聞き取れないほど低く、何かを話しているようだが、内容は全く理解できない。気味が悪くなり、僕はすぐに電話を切った。

しばらくスマホを見つめた後、再び眠りに戻ろうとしたが、何か胸騒ぎがした。だが、その時は特に気にせず、「間違い電話だ」と自分に言い聞かせて眠りについた。

次の日、仕事をしている最中にふと昨夜のことを思い出した。気になって履歴を確認してみると、確かに「不明な番号」からの着信が残っていた。しかし、何か違和感があった。通話時間が「0秒」と表示されていたのだ。

「そんなはずはない、確かに出たはずだ」と思い、何度か履歴を確認したが、通話時間は変わらず0秒のままだった。ますます気味が悪くなったが、その日は忙しかったので、深く考えずに仕事を続けた。

しかし、同じことはその夜も起こった。

深夜2時を過ぎた頃、再びスマホが鳴り出した。画面を見ると、またしても「不明な番号」からの着信だ。恐る恐る出てみると、やはり雑音と、遠くで誰かが話しているようなかすかな声が聞こえてくる。しかし、昨夜よりも声が少し近くなっているように感じた。

「誰だ?」

自分でも驚くほど冷静な声で問いかけたが、返ってくるのはやはり同じ曖昧な音だけだった。気味が悪くなり、再び電話を切ろうとしたその瞬間、かすかに聞き取れる声が耳に入った。

「…そこにいるの…?」

一瞬、心臓が止まりそうになった。誰かが、僕に向かって問いかけている。まるで、僕の存在を確認しようとしているかのようなその声。だが、音はすぐに再び雑音にかき消され、僕は恐怖から反射的に電話を切った。

翌日、スマホの履歴を確認すると、やはり通話時間は0秒。まるで、電話がかかってきたことすら幻のように感じられる。

その晩、深夜2時が近づくにつれ、僕は次第に神経が高ぶっていった。どうしても寝つけず、時計ばかり気にしてしまう。そして、やはり2時を過ぎた瞬間、スマホが震えた。

「不明な番号」からの着信。

僕は恐る恐る電話に出た。すると、今度ははっきりと声が聞こえた。

「…どこにいるの…?」

女性の声だ。僕の背筋が凍った。まるで、すぐ近くにいるかのようなリアルな声で、その声は続けてこう言った。

「…ずっと探しているの…」

電話を持つ手が震える。もう耐えきれず、僕は電話を切った。だが、その瞬間、また電話が鳴り出した。同じ「不明な番号」からの着信だ。もうどうしていいかわからず、僕はスマホをベッドの上に放り投げ、頭を抱えて震えた。

しかし、着信音は止まらなかった。

翌日、僕は一睡もできないまま会社に行ったが、頭はぼんやりとしていて仕事に集中できなかった。何が起こっているのか、なぜ僕にこんなことが起きているのか全くわからない。スマホを確認することすら恐ろしかった。

その夜、僕は覚悟を決めてスマホをオフにして眠ることにした。これで電話がかかってくることはないだろうと、自分に言い聞かせてベッドに入った。

しかし、深夜2時を過ぎた頃、スマホが震え始めた。明らかにオフにしていたはずのスマホから、再び着信音が鳴り響いていた。

恐怖で体が固まり、スマホを確認する勇気が出ない。けれど、とうとう耐えきれずスマホを手に取ると、そこには「不明な番号」が表示されていた。

僕は恐る恐る通話ボタンを押した。すると、今度はすぐにその声が耳に飛び込んできた。

「…今、あなたの後ろにいる…」

僕は凍りついた。動けない。ゆっくりと息を止めたまま、後ろを確認することもできず、ただその声を聞き続けた。

だが、振り向く勇気がどうしても出なかった。

それ以来、僕は深夜2時が近づくとスマホを遠ざけ、別の部屋で寝るようになった。あの着信が再び鳴ることはなくなったが、何が起こっていたのか、未だに理解できないままだ。

そして今でも、時々ふとした瞬間に、あの声が耳元でささやくような感覚が蘇る。

「…今、どこにいるの…?」



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