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見知らぬ部屋:知らない間に置かれる物 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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僕が今住んでいるアパートは、築年数こそ古いものの、家賃が安く、静かで住みやすい。引っ越してからしばらくは何も問題がなく、平和な日々を送っていた。だが、ある日を境に、奇妙な現象が始まった。

それは、ふとした瞬間に気づいた。部屋の片隅に、見覚えのないものが置かれていたのだ。

最初に気づいたのは、小さなボールペンだった。ある朝、机の上にそのペンが転がっているのを見つけた。僕は特に文房具を使う習慣がなかったし、このボールペンも買った覚えがない。けれど、「どこかで紛れ込んだのだろう」と気にせず、引き出しの中にしまった。

しかし、次の日も同じように、見覚えのないものが現れた。今度は、一冊の古い雑誌だった。リビングのソファの上に置かれていて、まるで誰かがそこに座って読んでいたかのような状態だった。表紙は薄汚れていて、タイトルもかすれて読めない。僕は困惑しながらも、「先日来た友人が忘れていったのかな?」と考え、そのまま片付けた。

だが、その後も奇妙な現象は続いた。ある日は見知らぬ鍵、またある日は古びたメモ帳…。どれも僕のものではないし、誰かが部屋に入ってきた形跡もない。気味が悪くなり始めていたが、特に実害はなかったため、しばらく放置していた。

ある晩、帰宅してリビングの電気をつけた瞬間、ソファの上に大きな茶色の箱が置かれているのを見つけた。まるで、誰かが意図的にそこに置いたかのように、きちんと整えられていた。箱は何の変哲もない段ボール箱で、テープもかかっていなかった。

心臓が早鐘のように打ち始める。僕はその箱に一歩近づき、中を確認しようと手を伸ばしたが、恐怖心が先に立ち、すぐに引っ込めてしまった。

「誰が…?どうやって…?」

この部屋には僕しかいない。誰も鍵を持っていないし、誰かが入ってきた痕跡もない。震える手で箱をそっと持ち上げ、重さは感じられなかった。中身が何も入っていないのだろうか。だが、それでも確認するのが怖く、箱をそのまま廊下に置いた。

次の日、僕は箱のことを忘れようとして仕事に集中しようとした。しかし、頭の片隅には常にあの箱のことが引っかかっていた。帰宅するのが怖くなってきていたが、夜遅くになり、仕方なく家に戻ると、恐れていたことが起きていた。

箱が消えていたのだ。

昨晩、廊下に置いたはずの箱は、跡形もなく消えていた。誰かが持ち去ったのか?しかし、部屋には誰も入った形跡はなく、鍵もかかったままだ。

そして、その夜から、奇妙な物が現れるペースが急に加速した。今までは数日に一度だったのが、毎晩帰宅するたびに新しい「見知らぬ物」が部屋のあちこちに置かれている。

ある日は、僕の知らない本がテーブルの上に、別の日は古びた靴が玄関に揃えて置かれている。そして、ついにその「物」の中には、人形のようなものも含まれ始めた。小さな人形、壊れた腕時計、色あせた写真…。どれも僕には見覚えのないものばかり。

一体誰がこんなことをしているのか?自分が何かのいたずらに巻き込まれているのか、精神が参りそうになっていた。

ある晩、部屋に戻ると、見覚えのない物の中に、僕の私物が紛れ込んでいることに気づいた。今まで見知らぬ物ばかりだったはずなのに、その中に自分が愛用していたイヤホンが混じっていたのだ。

さらに不安が募る。どうして自分のものがここに?確かに、昨夜はベッドサイドに置いていたはずだ。それが今、テーブルの上に見知らぬ物と一緒に並んでいる。

その晩、僕は眠れなかった。夜中に目が覚めると、ベッドサイドにまた新しい「何か」が置かれているかもしれないという恐怖が頭から離れなかった。

次の朝、僕は決心して、この部屋を出ることにした。これ以上、見知らぬ物が現れ続ける生活には耐えられなかった。引っ越しの準備を進める中で、最後に見知らぬ物の一つ一つを片付けたが、どれも持ち出す気にはなれなかった。すべてをそのまま置いて、僕は部屋を去った。

引っ越した後、奇妙な物が現れることはなくなったが、時折考えてしまう。あの見知らぬ物は、一体どこから来て、誰が置いていたのか。もしかすると、僕が気づかぬうちに、何か別の世界に触れてしまったのかもしれない。

ただ、今はもう確かめることもできない。あの部屋に戻る勇気は、もうないのだから。



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