私は小学4年生の女の子。毎日、学校が終わると、家が近い仲良しの友達、ミカちゃんと一緒に下校するのが楽しみだった。この日も、いつも通り、ミカちゃんと一緒に学校を出た。だけど、今日は少し違った。いつもの帰り道が工事中で通れなくなっていたのだ。
「どうしよう、遠回りしなきゃね。」
「うん、でもどっちに行けばいいんだろう?」
迷っている私たちに、工事現場のおじさんが声をかけてきた。年配で、ヘルメットをかぶったおじさんが、無表情でこちらを見ている。
「この道は工事中だから、向こうの迂回路を行くといいよ。」
「ありがとうございます。」ミカちゃんが礼を言う。
でも、そのおじさんにはどこか違和感があった。目がうつろで、まるで遠くを見ているような感じ。話し方も抑揚がなくて、まるでロボットが話しているみたいだった。少し不安だったけど、言われた通りにその迂回路を行くことにした。
私たちは、いつもと違う道を進んでいった。普段なら通ることのない小さな路地だ。道の先に続く風景も、何となく違和感があった。
「こんな道あったっけ?」ミカちゃんが不思議そうに言う。
「ううん、たぶん、気づかなかっただけじゃない?」私は答えたけど、内心はミカちゃんと同じように思っていた。
歩き続けると、次第に周りの景色が変わり始めた。最初は普通の住宅街だったのに、だんだんと森のような道に変わっていったのだ。木々が道の両側に生い茂り、私たちの行く手を覆い隠していく。
「おかしいよね、こんな森なんて近くにあった?」ミカちゃんが不安そうに言う。
「ないよ…こんなところ、見たことないもん。」私も不安が募る。
住宅街を歩いているはずなのに、どうして森の中に入ってしまったのだろう。私たちは立ち止まり、これ以上進むべきかどうか迷った。
「引き返そうか…」
「うん…でも…」
その時だった。突然、大粒の雨が降ってきた。空は暗くなり、雷の音が遠くで鳴り響く。私たちはびっくりして、ずぶ濡れになりながら慌てて戻ろうとした。
「急ごう!」私はミカちゃんの手を握り、一緒に走り出した。雨はどんどん強くなり、視界も悪くなっていく。森の道を戻ろうと必死になって歩いた。
しばらくすると、森の先に薄明かりが見えた。
「あそこ、出口かも!」ミカちゃんが叫ぶ。
私たちは手をつないだまま、雨の中を全速力で駆け抜けた。すると、森を抜けた瞬間、不思議なことが起こった。あんなに激しかった雨が、突然やんだのだ。
「え…雨が止んだ?」
私は周りを見渡した。そこは、私の家のすぐ前だった。大通りに出たわけでもなく、まっすぐ自分の家の前にたどり着いていたのだ。
「ここ…私の家だよね?」
「うん、私も自分の家のすぐ近くだ…」ミカちゃんも混乱している様子だった。
それにもうひとつ奇妙なことがあった。さっきまでずぶ濡れだったはずの服や髪が、なぜか乾いていたのだ。ミカちゃんも同じように、服が全く濡れていなかった。
「おかしいよね…さっきまであんなに雨が降ってたのに。」
「うん、変だよ。だって、雨が嘘みたいに止んで、しかも濡れてない。」
私たちは呆然と立ち尽くしていると、家の玄関が開いて、お母さんが顔を出した。
「あら、おかえりなさい。どうしたの?そんな顔して。」
「ねえ、お母さん。さっきすごい雨が降ってたでしょ?」
「雨?今日一日、降ってないわよ。晴れてたじゃない。どうしたの、変なこと言って。」
私は信じられなかった。あの大雨は何だったんだろう?
ミカちゃんと顔を見合わせ、困惑したまましばらく黙っていた。私たちはあの不思議な道と、突然現れて消えた大雨のことを、何度も確認し合った。
「でも、確かにあったよね。あの森の道…」
「うん、私たち、確かに歩いたよ。」
二人で何が起こったのか話し合ったけれど、答えは見つからなかった。いつもの帰り道は、どこにもそんな森なんてないのだから。
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