僕は小学5年生の時、あの二人が大喧嘩を始めたのを今でも覚えている。やんちゃなA君とB君は、いつも何かしらで張り合っていたけど、その日は「どっちが勇気あるか」という話で言い争いがヒートアップしていた。
「おれのほうが絶対に勇気ある!」 「いや、おれだ!おまえなんか全然怖いもの知らずじゃないだろ!」
二人の口論はどんどんエスカレートしていき、ついにA君がこう言い出した。
「じゃあさ、近くの心霊スポット、あの廃屋に行って、証拠をとってくる!おまえが見てろよ!」
廃屋は、学校の近くにある有名な心霊スポットだった。昔は誰かが住んでいたらしいけど、今はボロボロになり、噂では幽霊が出ると言われている。僕たちクラスの男子もその場所を知ってはいたけど、実際に行く勇気は誰にもなかった。
B君も負けじと「おれがしっかり見届けてやる!」と言い放ち、放課後、二人は本当にその廃屋へ行くことになった。僕たちクラスの子は皆で止めようとしたけど、二人は聞く耳を持たなかった。
その日の放課後、A君とB君は廃屋に向かった。
翌日、二人は学校にやって来た。廃屋に入ったA君は証拠として、ボロボロのノートを持ち帰っていた。ノートは見るからに古く、表紙は朽ち果てていた。中を開くと、びっしりと気味の悪い手書き文字が並んでいて、何かの呪文のような、不気味な内容だった。
しかし、それよりも奇妙だったのは、A君の様子だ。廃屋に入る前のA君は、明るくていつも元気だったのに、今はまったく違っていた。無表情で、無口になり、ぶつぶつとノートに書いてある内容を繰り返しつぶやくようになってしまった。
「…これが、おれの…役目…ずっと見てる…」
誰もがA君の変わりように戸惑い、何も言えなくなっていた。
しばらくは学校に来ていたA君だったが、ある日を境に、学校に来なくなった。
数日後、B君に誘われて、僕はA君の家にお見舞いに行くことになった。心霊スポットへ行ったB君自身は元気で、あの日の出来事をあまり気にしていない様子だったが、僕はA君のことが気になっていた。
A君の家に着くと、出てきたのはやつれた表情のA君のお母さんだった。彼女は涙をこらえながら、僕たちにお礼を言った。
「お見舞いに来てくれてありがとうね。でも、Aは今、入院していて…しばらく学校に行けないの。いまは、しばらくそっとしてあげてほしいの。」
お母さんの言葉には、どこか重々しいものがあった。僕たちはそれ以上何も言えず、帰ることになった。あのノートがどうなったのかも聞けなかった。
その後、A君の話はだんだんと忘れ去られた。誰も彼のことを話題にすることはなく、ノートのことも触れないまま、時が過ぎていった。
月日が経ち、僕も大人になった。ある日、ふとした瞬間にA君のことを思い出した。
「あいつ、どうしてるんだろう…」
ノートを持って廃屋から出てきたあの日のA君。あの異様な表情と、ぶつぶつとつぶやく声。彼がどうなったのか、その後どう過ごしているのかが気になった。
だが、考えるのをやめた。思い出すたびに、背筋がぞっとする感覚がよみがえるからだ。
「やっぱり、もう思い出さないほうがいい。」
そう自分に言い聞かせ、僕はそのまま日常に戻っていった。
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