いつものように、喫茶店に集まった私とリョウは、アキラの話を待ちわびていた。アキラは静かにコーヒーをすすりながら、ふと深く息をついて話を切り出した。
「今日は、少し厄介な依頼の話をしようか。5歳の子供がいる母親からの相談だった。最初は単なるイマジナリーフレンドの話かと思ったんだけど、そうじゃなかったんだ…」
アキラが話し始めると、私たちはすぐにその不気味な雰囲気に引き込まれた。
「ある日、一人の母親が俺に相談に来た。5歳の息子が家の中で『知らない子』と遊んでいるというんだ。最初は子供が空想で友達を作る、いわゆるイマジナリーフレンドだと思って、特に気にしていなかったらしい。でも、その『知らない子』が息子に物をくれるようになったというんだ。」
アキラは少し顔を曇らせ、続けた。
「俺はその時点で、ただのイマジナリーフレンドだとは思わなかった。だが、その母親が見せてくれた物を見た瞬間に、これはまずいって確信したんだ。彼女が持ってきたのは、日本人形やアンティークの古い人形だった。それも、息子がその『知らない子』からもらったものだという。」
リョウが顔をしかめて聞いた。「アンティーク人形って、普通に古いだけじゃないのか?」
「ああ、見た目は普通の人形だ。でも、何かが違う。目がどこか不自然に輝いていて、肌の質感がまるで生きているような感じがするんだ。説明は難しいが、手に持った瞬間、その人形から異様な冷たさを感じたんだよ。母親もそれに気づいていたらしく、何かがおかしいと思って俺に相談してきたんだ。」
アキラはその時点で、その依頼を受ける決心をしたという。
「これは普通じゃないって直感があった。母親に状況を詳しく聞いた上で、俺はその家に向かった。家の中に入った瞬間、空気が重いというか、妙に冷たいんだ。風もないのに、まるで空気が流れない感じ。俺はその部屋でしばらく過ごして、子供と二人きりにしてもらった。」
アキラは少し笑いながら続けた。
「最初は何も異常はなかった。5歳の男の子は普通に元気で、人懐っこい子だった。二人でおもちゃで遊びながら話をして、特に問題はないように思えた。だけど、しばらくしてから、急に背後から声が聞こえたんだ。」
『お兄ちゃん、誰?』
アキラの話に、私とリョウは思わず息を呑んだ。
「その声は、はっきりと聞こえた。振り返ると、そこには見たことのない男の子が立っていた。年齢は5歳くらい、服装は昭和の頃の子供みたいな感じで、少し古めかしい。見た目は普通の子供なんだけど、俺はすぐにこれはただの子供じゃないと感じた。直感的に『やばい』って思ったんだ。」
リョウが震える声で聞いた。「それで、どうしたんだ?」
「俺は、その男の子に話しかけたんだ。『君、ここで遊んでるの?』って聞くと、彼は少し寂しそうに頷いた。そこで、俺は彼に手元にあった人形を渡したんだ。子供が喜びそうな人形で、『これ、君にあげるから、もうこの家では遊べないよ。俺と一緒に来よう』って言ったんだ。」
アキラの語り口には、緊張感が漂っていた。
「その男の子は素直に俺の言葉を聞いて、人形を抱えたまま、俺についてくるように歩き始めた。俺は内心、これが成功するかどうかわからなかったが、とにかくその子を連れ出すことに集中した。家を出ると、その子は少しずつ姿がぼんやりとしていったんだ。でも、俺は構わず、彼を連れて知り合いのお寺に向かった。」
「知り合いのお寺?」私は思わず尋ねた。
「ああ、そこの住職は霊的な供養に詳しくて、過去にも何度か助けてもらっていた。俺はその男の子と人形をお寺に連れて行き、住職に供養をお願いしたんだ。住職もすぐに異常を感じ取ってくれて、その場で供養が行われた。」
アキラはコーヒーを一口飲み、ふぅと息をついた。
「その後、家に戻ると、もうあの男の子の気配はなくなっていた。母親も少し落ち着いた様子だったし、息子も以前のように一人で遊ぶことがなくなった。それ以来、家の中で何か不気味なものを感じることはなくなったんだ。」
リョウが少しホッとしたように言った。「じゃあ、解決したんだな?」
「まあ、そうだな。ただ、その人形や男の子が何だったのかは、結局わからないままだ。過去の何かが影響していたのか、それとも単なる偶然なのか…でも、一つ確かなのは、あの男の子はただの空想の存在じゃなかったということだ。」
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