怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

クリアの代償 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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ホラーゲームが好きな僕にとって、新作のホラーゲームをプレイするのは楽しみの一つだ。特に難易度が高くて、謎解きや恐怖演出がしっかりしているものだと、達成感もひとしおだ。

その日も、久しぶりに評判のホラーゲームを手に入れ、夜更かししながらプレイしていた。舞台は廃墟となった洋館で、隠された秘密を探りながら呪われた住人たちと対峙するという、王道のストーリーだ。グラフィックも美しく、恐怖演出は最高で、プレイするたびに背筋が寒くなるような感覚がたまらなかった。

序盤から難易度が高く、何度も失敗しながらも、やっと終盤に差し掛かった頃のことだった。敵の数も増え、仕掛けも複雑になってきたが、僕は少しずつ進み、最終ボスの手前まで到達した。

「もう少しでクリアだ…」

ドキドキしながら進んでいると、突然ゲーム画面がフリーズした。

「またバグか?」

最近のゲームは複雑なせいか、バグやフリーズが多い。僕は少しイラつきながらも、再起動しようとキーボードを叩いた。その瞬間、真っ黒になった画面に、見慣れないエラーメッセージが現れた。

「警告:このゲームをクリアすると、あなたは取り返しのつかないものを失います。」

「何だこれ?」

一瞬、ホラー演出の一部かとも思ったが、どう見ても普通のエラーメッセージにしか見えない。ゲーム内のテキストやデザインとは明らかに違うフォントで表示されていた。

「取り返しのつかないものを失う…?」

何かの脅しだろうか。そう思いながらも、少し不安がよぎった。こんなメッセージが出るホラーゲームなんて、聞いたことがない。それでも、ここまでプレイしてきたし、クリアを諦めるわけにはいかない。

無視して再びゲームを進めようとしたが、もう一つ新しいメッセージが現れた。

「本当に続けますか?その先に待つものは…」

まるでゲームクリアを止めようとしているかのような内容だ。ゲーム内の演出ならまだ分かるが、エラーメッセージでこんなことが書かれるのはおかしい。

僕は意を決して「はい」を選択し、ゲームを再開した。画面が元に戻り、最終ステージに突入したが、頭の中にはあのエラーメッセージがずっと引っかかっていた。ゲームをクリアすることで「取り返しのつかないもの」を失うなんて、どういう意味だ?

それでも、もう一度確認しようとは思わなかった。ゲームの進行を止めるわけにはいかない。僕は最終ボスを倒すために集中し、ついにその瞬間が訪れた。

最終ボスを倒し、エンディング画面が流れ始めた。達成感と共に、勝利の余韻に浸っていると、また画面が突然フリーズし、同じエラーメッセージが再び表示された。

「あなたは取り返しのつかないものを失いました。」

今度は、まるでその事実が確定したかのような表現だった。僕は一瞬、ぞっとした。何を失ったというのか?その瞬間、部屋の中が妙に静かに感じられた。

ゲームのエンディングが流れるべき画面は真っ暗なままで、何も起こらない。ただ、心の奥底で何か大切なものが抜け落ちたような、そんな感覚が襲ってきた。

「何だったんだ、このゲーム…?」

その後、何度ゲームを再起動しても、同じエラーメッセージが表示され、エンディングを見ることはできなかった。あの「取り返しのつかないもの」を失ったという言葉が頭の中にずっとこびりついて離れない。

何かが変わったのかもしれない。だけど、何が変わったのか、僕には分からなかった。ただ、そのエラーメッセージの警告が、本当だったんじゃないかと思わせるような、奇妙な不安感だけが残っている。



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