僕は、ずっとプレイしているホラーゲームがある。何週間もかけて進めてきたそのゲームは、難易度が高く、怖さも一級品だ。ストーリーも複雑で、毎晩遅くまでプレイしているが、ようやく最終ステージまでたどり着いた。あと少しでクリアできる――その期待と緊張が入り混じる中、手に汗を握りながらゲームを進めていた。
そのゲームは、幽霊や怪物に満ちた廃墟を探索し、手がかりを集めて呪われた屋敷から脱出するという内容だ。謎解き要素も多く、プレイ中は常に恐怖と隣り合わせだ。だが、ここまで来たら、クリア目前の達成感が先立って、恐怖はもう二の次だった。
最終ボスとの戦いに差し掛かり、僕はゲーム画面に集中していた。何度も失敗しながらも、ボスの動きを覚え、少しずつダメージを与えていく。そして、ついに、あと一撃で倒せるというところまで来た。心臓がバクバクし、手のひらは汗でじっとりとしていた。
「これで終わりだ…!」
そう思った瞬間、画面が突然フリーズした。
「なんだ…またかよ!」
このゲームは少し古いこともあり、バグやフリーズがたまに起こる。正直、ここまで来てフリーズなんて冗談じゃない。再起動しようとキーボードに手を伸ばしたが、その瞬間、画面が真っ黒になり、見慣れないエラーメッセージが表示された。
「警告:このゲームをクリアすると、扉が開かれます。あなたは本当に進みますか?」
一瞬、何を言われているのか理解できなかった。扉?クリアすると何かが「開かれる」ってどういうことだ?これがゲーム内の演出なのか、それともシステムエラーなのかも分からない。ただ、そのメッセージが、普段のシステムエラーとは明らかに違うことに気づいた。
「扉が開かれる…?」
画面の中央に、不気味な警告文が浮かび上がり、まるで現実に語りかけてくるかのように感じた。今まで数多くのホラーゲームをプレイしてきたが、こんなメッセージを見たのは初めてだ。ゲームの演出として不気味さを出すためのものだと最初は思ったが、その文言が妙に現実感を帯びていて、ゾッとした。
次の瞬間、画面が再び動き出し、最終ボスの戦闘シーンに戻った。エラーメッセージは消え、ゲームが通常通り進行している。あと一撃でクリアできる状態に戻ったのだが、さっきのメッセージが頭から離れなかった。
「クリアすると…何かが起こるのか?」
ゲームをクリアするということは、ただの達成感で終わるはずだ。しかし、さっきのメッセージが「扉が開かれる」と言っていたことが、どうにも引っかかる。僕はその「扉」が何を意味するのか、考えれば考えるほど、不気味で恐ろしい気持ちになってきた。
今なら、クリアできる。あと少しでエンディングにたどり着けるはずだ。しかし、その瞬間、何か現実に影響を及ぼすんじゃないか――そんな考えが頭をよぎり、僕の手が止まった。
「これ…本当にクリアして大丈夫なのか…?」
自分でも馬鹿げていると思った。所詮はただのゲーム、クリアしたからといって現実に何かが起こるわけではない。それは頭では分かっていた。だが、あのメッセージがどうしても頭の中にこびりついて離れない。
結局、僕はその一撃を入れることができなかった。手が震えて、ゲームを再開する気力がなくなった。クリアすれば達成感が待っているはずなのに、逆に恐怖心が勝ってしまったのだ。
ゲームを中断し、パソコンをシャットダウンした。画面が消えても、部屋の中にはあのエラーメッセージがまだ漂っているような気がしてならなかった。
「扉が開かれる…クリアすると…何が起こるんだ?」
その日は結局、ゲームをクリアできないまま、ベッドに入った。目を閉じても、あのメッセージのことが頭をよぎり、なかなか眠れなかった。たかがゲームの一言で、ここまで追い詰められるとは思わなかったが、怖いものは怖い。
クリアできるはずなのに、どうしてもその一歩が踏み出せないまま、ゲームは未クリアのまま放置されている。今もなお、あの扉を開ける勇気は出ないままだ。
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