私の人生で、幽霊やおばけなどの体験はほとんどありません。怖い話や心霊現象にあまり興味がないし、そういったことを身近に感じたこともほとんどありません。ただ、一度だけ、不思議で少し気味が悪い体験をしたことがあります。派手な出来事でもなく、背筋が凍るような恐怖体験というわけではありませんが、今でも忘れられない出来事です。
私はいつも部屋にお気に入りの写真を飾っていて、写真立てには直近で一番気に入っている写真を入れることにしています。その時も、友人たちと山登りに行った時の記念写真を写真立てに入れて飾っていました。頂上で撮った集合写真で、背景には美しい山々が広がり、みんな満面の笑顔で写っている、すごく好きな写真でした。
ただ、写真には少しだけ気になる点がありました。よく見ないと気づかないのですが、写真の隅の方に黒いモヤのような影が映り込んでいたのです。風景の一部にしては不自然な形で、なんとも説明しにくい感じ。最初は特に気にしなかったものの、そのモヤをじっくり見ると、どうも不気味で、どこか胸騒ぎのするような気持ちになりました。
でも、写真の大部分は友人たちの笑顔ときれいな景色だったので、そのまま飾っておくことにしました。ところが、その写真を写真立てに差し替えてから、奇妙なことが起こり始めたんです。
まず、家に帰ると、必ずと言っていいほど写真立てが倒れている。朝出かける時にはちゃんと立っていたはずなのに、夜帰ってくると、何故か倒れているんです。風が吹いたわけでもなく、地震があったわけでもない。それでも、写真立てが倒れているのは一度や二度ではなく、何度も続きました。
さらに、部屋でテレビを見ながらくつろいでいる時、目の前で写真立てが突然倒れることもありました。今までそんなことは一切なかったので、最初は少し驚いただけだったんですが、何度も繰り返されるうちに、だんだん気味が悪くなってきました。
最初は、「長年使っている写真立てだから、バランスが悪くなったのかな?」とか、「もしかして部屋のどこかに風の通り道でもあるのか?」と、自分なりに理由をつけて納得しようとしていました。でも、その写真に写った黒いモヤのことを思い出すたびに、不安な気持ちがよぎるんです。
写真を飾ってからしばらく経ったある日、友人たちとバーベキューをする機会がありました。楽しい時間を過ごし、バーベキューの時に撮った写真を新しく現像して帰りました。そして、部屋に戻ると、そのバーベキューの写真を写真立てに入れ替えました。
すると不思議なことに、それ以来、写真立てが倒れることは一切なくなったんです。毎日帰ってきても、写真立てはしっかり立ったままで、部屋でくつろいでいても倒れる気配はありませんでした。
ただそれだけのことですが、あの黒いモヤの写真を飾っていた時だけ、写真立てが倒れ続けたことが、今でもどうしても頭から離れません。写真を差し替えた途端に現象が止まったのも、偶然とは思えない気がして、どこか不気味に感じています。
今もその山登りの写真はしまい込んでありますが、あの黒いモヤは一体何だったのか、そして、なぜ写真立てがあの時だけ倒れ続けたのか――いまだに答えは分かりません。
それが、私の唯一の、気味の悪い体験です。
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