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ゆっくりと水没する部屋…心療内科で語られた恐怖の夢の真実 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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診察室はいつもと変わらない静けさに包まれていた。しかし、目の前の患者は、どこか落ち着かない様子で椅子に座っていた。定期的な質問を終えたところで、彼は深いため息をつき、ぽつりと話し始めた。

「先生、最近、とても怖い夢を見るんです。」

私は彼の表情に少し不安を感じながら、優しく促した。

「どんな夢だったんですか?」

彼は少し考え込んでから、静かに話を続けた。

「夢の中で、最初は普通の部屋にいるんです。自分の部屋かもしれません。でも、ふと気づくと、床に水が溜まり始めていて……最初はほんの少しだけなんです。でも、気づかないうちに水がどんどん増えていって、だんだん部屋全体が水浸しになっていくんです。」

彼の声には不安が色濃く表れていた。私はその夢の展開が彼にどんな影響を与えたのかを探るため、さらに質問をした。

「水が溜まり始めた時、どんな感情が湧いてきましたか?」

「最初は、ただ不安でした。『なんで水が溜まっているんだろう』って思って、原因を探そうとするんです。でも、見回しても水源がどこなのか全くわからない。それに、水はゆっくりと溜まっていくから、焦りが徐々に増していって……」

彼は少し身を縮めながら、その感覚を思い出しているようだった。

「どのくらいのスピードで水が増えていくんですか?」

「それが、時間が進むにつれてどんどん早くなっていくんです。最初は床が濡れるくらいだったのに、次第に膝の高さまで来て、気がついたら腰の高さまで水が溜まっていました。『このままだと、溺れてしまうんじゃないか』って怖くなってきて……でも、どこにも逃げ場がないんです。」

彼の話を聞いていると、その恐怖が伝わってくる。私はその恐怖がどのように増幅されたのかをさらに深掘りした。

「部屋の中で、何か行動を起こそうとしましたか?例えば、水を外に出すとか、部屋から逃げ出すとか。」

「はい、もちろん逃げようとしました。ドアに向かって行こうとしたんですが、水のせいでドアが開かないんです。押しても引いても動かなくて、壁を叩いても誰にも気づかれない。それに、水はどんどん増えていって、もう胸の高さまで来ているんです。呼吸もできなくなるんじゃないかって、すごく焦りました。」

彼はその時の感情を強く思い出したかのように、手で胸元を押さえた。

「水が上がってきた時、何が一番怖かったんですか?」

「何よりも、自分がこのまま溺れるんじゃないかっていう恐怖です。何もできなくて、ただ水が迫ってくるのを感じるしかないんです。しかも、周りに誰もいない。助けを求めても誰も来ないし、どれだけ大声を出しても、何も変わらないんです。」

彼はその夢の中での孤独感や無力感を思い出しながら、さらに言葉を続けた。

「やがて水が首の高さまで来て、顔まで迫ってきて……もうこれ以上は耐えられないって思った瞬間、夢から覚めました。でも、夢から覚めた後も、まだ体中が水に包まれているような感覚が残っていて……しばらくの間、現実だと思っていました。」

私は彼の話に耳を傾けながら、その夢が彼にどれほど強い影響を与えたかを感じ取った。

「その夢から覚めた後、何か現実の生活に影響が出たことはありましたか?」

「そうですね……夢の中で感じた焦りや不安が、現実にも影響を与えている気がします。最近、何をしていてもどこかで追い詰められている感覚があって、何をしても不安が消えないんです。夢での水が、現実のプレッシャーを象徴しているような気がして……でも、どう対処すればいいのかわからなくて。」

彼はその夢の持つ意味に悩んでいるようだった。私はその夢の象徴性に触れながら、話をまとめた。

「その水が少しずつ部屋に溜まっていくというのは、現実で感じているストレスや不安が、徐々にあなたに影響を与えていることを反映しているのかもしれませんね。夢の中で逃げ場がなかったように、現実でもどこかで逃げられないプレッシャーを感じているのかもしれません。まずは、その不安の源を見つけることが、解決への第一歩かもしれませんね。」

彼は私の言葉を聞きながら、深く考え込んでいた。

「そうかもしれません……最近、仕事でもプライベートでも、色々なことが重なっていて、気づかないうちにそれが溜まっていたのかもしれませんね。でも、その水がいつか溢れないか心配です。」

診察室を出る彼を見送りながら、私はその夢の持つ不安と恐怖が彼に与えている影響について考え続けた。水が少しずつ溜まるという夢は、彼の心の中で徐々に高まるプレッシャーを象徴しているのかもしれない。そして、そのプレッシャーが彼を溺れさせないようにするためには、早急な対処が必要なのかもしれない。



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