大学の仲間たちと久しぶりにドライブに出かけた日、僕たちは田舎町の古びた商店街に足を踏み入れた。車を停めて休憩がてら、ぶらぶらと散策していると、ボロボロになったガチャガチャが目に入った。どう見ても使われていないような古い機械で、色は剥げ、ハンドルも錆びついていた。
「これ、動くのかな?」
友人の一人が半ば冗談めかしてそう言った。興味半分、懐かしさもあり、僕たちは試しにコインを入れてみることにした。
すると、驚いたことにガチャガチャはガリガリと音を立て、カプセルがコロリと転がり出てきた。みんなで顔を見合わせ、「本当に動いたな」と笑い合った。
しかし、カプセルを開けた瞬間、その場の空気が一変した。中に入っていたのは、小さな骸骨の人形だった。手足が不自然に曲がり、目の部分はくぼんでいて、何とも言えない不気味さが漂っていた。あまりに気味が悪く、僕はそれをじっと見つめたまま動けなかった。
「うわ、何これ…不気味だな。」
「ほんと、気持ち悪いな。」
友人たちも驚きつつ、明らかに嫌な雰囲気を感じている様子だった。しかし、一人の友人、ケンジだけは違った。彼はその骸骨の人形を手に取り、妙に嬉しそうに笑いながらこう言った。
「俺、これ気に入った。ポシェットにつけてみようかな。」
僕たちは冗談だと思ったが、ケンジは本気で骸骨を自分のポシェットにつけた。僕たちは何も言わず、軽く笑ってその場を立ち去った。
それから数日が経ち、大学でもケンジと顔を合わせることが多かった。最初は何も変わった様子はなかったが、ある日、彼が妙なことをつぶやくようになったのだ。授業中や昼休み、突然ぼそぼそと何かを言い始める。それも、まるで誰かに話しかけるような口調で。
「影が…そこに…いる…」
「骨が…カラカラと…」
何を言っているのか分からない。僕や他の友人たちは、彼が何かおかしな冗談でも言っているのかと思ったが、ケンジ自身は全くそのつぶやきを覚えていないという。
「お前、さっき何か言ってたぞ?」
「え?俺、何も言ってないよ?」
明らかに本人は意識していない。これが何度か続き、僕たちはだんだんと不安を覚え始めた。
そんなある日、僕たちはまたドライブに出かけた。途中で立ち寄ったファミレスで、楽しく談笑していた時、ケンジがまた突然、意味不明なことをつぶやき始めた。
「骨が…燃えろ…カラカラと…焼けて…」
その場の空気が一気に冷えた。僕たちはゾッとして顔を見合わせた。ケンジはポシェットにつけた骸骨の人形を触りながら、ぼそぼそと呟いている。
「これって、あの骸骨の人形のせいじゃないか?」
友人の一人が低い声で言った。僕もそう思わざるを得なかった。どう考えても、ケンジがこうなったのはあの日からだ。
「捨てたほうがいいんじゃないか?」
「いや、もうこんなの焼いてしまおう。」
その場の誰もが、もうこの不気味な人形を手元に置いておくのは良くないと感じていた。僕たちはケンジが反対するのも聞かず、ファミレスの灰皿を使ってその骸骨の人形を焼くことにした。
「やめろよ!やめろって!」
ケンジは必死に止めようとしたが、僕たちは決心した。ライターで火をつけ、骸骨の人形を燃やし始めた。すると、信じられないことが起こった。火が骸骨を包み込むと、微かに「ギィ…ギィ…」という小さな苦しそうな声が聞こえたのだ。
「な…何だ…?」
僕たちは顔を見合わせた。人形がまるで生きているかのように、火の中で苦しんでいる。それが焼け焦げ、バリバリと音を立てて崩れていく様子は、まるで何かが命を奪われているかのようだった。
やがて骸骨の形は崩れ、完全に燃え尽きると、声も止まり、人形はただの灰になってしまった。
「…終わったのか?」
僕たちは恐る恐るケンジを見た。彼は呆然と灰皿を見つめていたが、それ以降、意味不明なつぶやきは一切なくなった。
あの骸骨人形が何だったのか、今でも僕たちは分からない。ただ、ケンジの様子が戻ったことで、僕たちはほっとした。
それ以来、ケンジが人形を気に入ることはなくなり、僕たちは二度とあの古ぼけたガチャガチャに手を出すことはなかった。
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