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深夜のコインランドリー:白いワンピースの女 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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これは、実際に僕が体験した話だ。

ある日の深夜、僕は仕事で溜まっていた洗濯物を一気に片付けようと、近所のコインランドリーに向かっていた。自宅の洗濯機は小さく、毛布や大物は外で洗わないといけないから、時々深夜にコインランドリーを使っていたんだ。夜遅い時間のコインランドリーはいつも空いているから、ゆっくりと時間を過ごせるのが良かった。

その日も、洗濯と乾燥をかけて、持ってきた雑誌をパラパラとめくりながら時間を潰していた。スマホでニュースを見たり、SNSを眺めたり、そんな何気ない時間がしばらく続いた。機械の音が静かに響く空間で、一人きりという状況は、むしろ落ち着くくらいだった。

ところが、その静かな時間が突然途切れた。入口から誰かが入ってきた気配を感じたのだ。

最初は「誰かが洗濯に来たんだろう」と思って、特に気にしていなかった。でも、ふと顔を上げると、その人が妙に目を引いた。真っ白いワンピースを着た、髪の長い女性が、ゆっくりと、ふらふらとした足取りで歩いていた。普通ならすぐに目をそらすところだが、何か異様な雰囲気が漂っていて、どうしても目が離せなかった。

彼女はうつむいていて、顔は見えなかった。長い髪が顔を覆い隠していて、表情もわからない。ただ、その存在感が異様で、胸の奥に不安がじわじわと広がっていくのを感じた。

コインランドリーの中を、ゆっくりと進んでいく彼女。普通なら、洗濯機の前で止まって何かを始めるのだろうと思ったが、彼女はそうしなかった。まっすぐに前進し続け、やがて僕の目の前を通り過ぎていった。

その時、僕はあることに気づいてしまった。彼女の足音が一切聞こえない。コインランドリーは静かで、乾燥機の音しか響いていないはずなのに、彼女の足元からは何の音も発せられていなかった。

その異様さにますます目を離せなくなった僕は、彼女の動きを目で追い続けた。そして、信じられない光景が目の前で繰り広げられた。

彼女は、洗濯機が並ぶ奥の壁に向かって進んでいた。そこには、何の出口もない。通常なら、壁の前で止まるか、方向を変えるはずだった。ところが、彼女はそのまま壁に向かって進み続けた。

そして、次の瞬間、彼女はそのまま洗濯機と壁をすーっと通り抜けて消えていった。

僕は目を疑った。現実でそんなことが起こるわけがない。頭の中では理解できなかったが、確かに僕は見た。彼女は物理的にあり得ない動きで、壁をすり抜けて消えたのだ。

一瞬、何が起きたのかわからず呆然としたまま、その場に立ち尽くしていた。胸がバクバクと鳴り、頭が追いつかない。深夜の静かなコインランドリーに、再び乾燥機の音だけが響いている。

すぐに、僕は洗濯物をそのままにして外へ飛び出した。もう怖くてその場所にいられなかったんだ。あれは一体何だったのか。人なのか、それとも別の何かなのか、今でもわからない。

あの夜以来、僕はコインランドリーに行く時、深夜は避けるようになった。あの白いワンピースの女性が再び現れるのではないかという不安が、どうしても消えないからだ。

今でも思い出すと、背筋が凍るような感覚に襲われる。



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