中古の一軒家を購入した時、僕たち家族は新しい生活に胸を躍らせていた。妻と小学生の娘の3人暮らしで、広い庭や古風な内装に、僕も妻も満足していた。特に娘は、庭で遊べることを楽しみにしていた。少し古い家だが、丁寧に手入れがされていて、そこには温かみすら感じられた。
引っ越してからしばらくして、僕はふと思い立ち、屋根裏部屋を調べることにした。まだ一度も開けていない屋根裏には、前の住人が残していったものがいくつか置かれていた。埃をかぶった古い家具や箱の中に、一つだけ異様に目立つものがあった。
それは、美しいアンティークドールだった。
精巧な作りで、まるで人間のような顔立ちをしていた。そのドールは綺麗なドレスを着ていて、優雅な雰囲気が漂っていた。特に目が印象的で、まるで生きているかのような輝きを持っていた。
「娘が喜びそうだな…」
そう思い、そのアンティークドールを家の中に持ち帰り、娘にプレゼントすることにした。娘は最初、とても喜んでいた。ドールを大事に抱え、寝る時も部屋に飾って楽しんでいた。
しかし、次第に娘の様子が変わっていった。
ある日、娘が僕にこう言ってきた。
「お父さん、このドール、二人の時だけ動くの。」
最初は、ただの子供の想像だろうと思っていた。娘もどこかで怖い話を聞いて、そういうことを言い出したのだろう、と。だが、娘は日に日にそのドールを怖がるようになり、夜はそのドールをクローゼットにしまっておくように頼んできた。
「お父さん、お願い。クローゼットに入れて。夜、一緒にいると怖いの。」
娘の怯え方があまりにも真剣だったので、僕も少し不安になり、夜はドールをクローゼットの奥に片付けておくようにした。妻も最初は笑っていたが、娘が本気で怯え始めたのを見て、少し心配そうな顔をしていた。
そんなある日、僕の母、娘にとっての祖母が遊びに来ることになった。家の中を案内し、娘の部屋にも入った時、クローゼットにしまってあったドールが目に留まった。母が不思議そうにそのアンティークドールを取り出し、手に取った。
「ずいぶんと気味悪い人形を持っているわね。」
母の言葉に、娘はすぐに反応した。「おばあちゃんもそう思うよね!私も怖いの…。このドール、動くんだよ、二人でいる時に…」
母はしばらくそのドールを見つめた後、少し考え込むような表情を浮かべた。そして、ふいにこう言った。
「このアンティークドール、私が持っていってもいいかい?ちゃんと処分するから。」
娘はその言葉を聞いた瞬間、ほっとしたような顔をした。
「お願い!おばあちゃん、持っていって!」
娘の反応を見て、僕たちも母にドールを渡すことにした。母はドールを持って帰り、どのように処分したかは話してくれなかったが、何か特別な方法で処分したのかもしれない。
それからというもの、娘は以前のように明るく、平穏な日々を取り戻した。夜もよく眠れるようになり、ドールを怖がることもなくなった。僕たちもそのドールのことは忘れ、家での新しい生活を楽しむようになった。
母が持って帰ったアンティークドールが、どこでどう処分されたのかは今でも知らない。けれど、それ以来、娘があのドールについて口にすることは一切なくなった。あのドールは、ただのアンティーク品だったのか、それとも…?
今でも時々、あの人形の目の輝きが頭をよぎることがある。しかし、それについて考えすぎるのはやめたほうがいいのかもしれない。
娘が元気でいてくれるなら、それで十分だ。
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