それは、ある寒い夜のことだった。私は仕事が終わった後、遅い時間に溜まった洗濯物を片付けようと、近所のコインランドリーに向かっていた。深夜のコインランドリーはいつも空いていて、機械の音だけが響く静かな空間だ。自分一人で過ごすには悪くない場所だと思っていた。
その日も、いつものように洗濯と乾燥機をセットし、待ち時間を過ごしていた。時間はすでに深夜1時を回っていた。店内には私以外誰もいない。冷たい空気が漂う中、乾燥機が静かに回っている音が、ただ規則的に耳に入ってくる。
私は持っていたスマホを見ながら過ごしていたが、しばらくして、いつの間にか居眠りをしてしまっていた。
ふと、何か違和感を感じて目を覚ました。だが、目を開けた瞬間、全身が動かないことに気づいた。全身が重くてまるで石のようで、指一本動かすことができない。心臓が早鐘のように鳴り、息が苦しくなってくる。
「これ…金縛り?」
深夜の静まり返ったコインランドリーで、私はただベンチに座ったまま、体が動かなくなっていた。周りの音が突然遠くなり、乾燥機の音も微かにしか聞こえない。
そんな中、視界の端に何か白いものが映り込んだ。動けない体の中、私は必死に目だけを動かして、それを確認しようとした。
そこには、白い影が立っていた。
その影は人間の形をしていたが、ぼんやりとしか見えず、まるで霧のように輪郭が曖昧だった。体が震えるような恐怖を感じたが、動くことも声を出すこともできない。ただ、その白い影が静かにこちらを見つめているのがわかる。
「何…これは…?」
私は心の中で叫んでいたが、白い影は近づいてくるわけでもなく、ただ立ち尽くしているだけだった。それでも、その存在感が恐ろしく、全身に冷たい汗が流れた。
影は、ゆっくりと、しかし確実に私の方へ一歩一歩近づいてきているように見えた。足音は聞こえないが、存在がどんどん強く感じられる。逃げ出したいのに、体が動かない。まるで体がその影に引き寄せられているかのような感覚に陥った。
どれくらいの時間が経ったのかわからないが、突然、全身の重さが一気に消え、私は体を動かせるようになった。驚いて飛び起き、辺りを見渡したが、白い影は消えていた。コインランドリーには、いつも通りの乾燥機の音だけが響いていた。
しかし、心臓の鼓動は激しく、全身は冷や汗でびっしょりだった。
「今の…夢だったのか…?」
そう思いたかったが、体中の寒気や金縛りの感覚があまりにもリアルすぎた。私は急いで乾燥機を確認し、乾いた洗濯物を取り出して、コインランドリーを後にした。
あの夜の出来事が、何だったのかは今でもわからない。単なる悪夢だったのかもしれない。ただ、白い影の冷たい視線が今でも忘れられない。
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