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夜の巡回中に起きた怪奇現象:誰もいないエレベーターが止まる理由 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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私は、あるビルの夜間警備員として働いている。この仕事は基本的に静かなもので、夜中に誰かが出入りすることもなく、ひたすらビル内を巡回するだけだ。長い時間、一人で広いビルを見回るのは慣れているが、今でも思い出すと背筋が寒くなる奇妙な出来事がある。

そのビルは10階建てのオフィスビルで、夜になると当然誰もいない。ビル全体がしんと静まり返り、私一人だけが巡回を行う。エレベーターを使いながら各階を回り、異常がないか確認していくのが毎晩のルーティンだった。

ある夜、いつも通り巡回をしていると、エレベーターが突然、停止した。

その時、私は1階のロビーで次の階に向かおうとしていた。普段はボタンを押さない限りエレベーターは動かないはずなのに、何も操作していないのにドアが開いた。まるで誰かが乗ってきたかのようなタイミングだった。

「…誰もいないよな」

当然のことながら、その時間帯にビルの中には誰もいない。私は不安に駆られながらも、エレベーターを確認した。中を覗いてみたが、誰も乗っていない。ただ、異様なほど冷たい空気が漂っていた。普段よりも不気味な感じがしたが、「機械の誤動作かな」と自分に言い聞かせ、いつものようにエレベーターに乗り込んだ。

その時は、ただの偶然だと思っていた。しかし、それから数日後、またしても同じようなことが起こった。

その夜も巡回中、5階の見回りを終えてエレベーターを呼び、1階に戻ろうとしていた。エレベーターのドアが開くと、またしても誰も乗っていないのに、まるで何かが中にいるかのような違和感があった。何も見えないが、強烈に感じる「誰かがいる」という感覚。

私は無言でエレベーターに乗り、1階のボタンを押した。しかし、エレベーターはなぜか3階で止まった。当然、誰も呼んでいないはずだ。ドアがゆっくりと開くと、そこにはやはり誰もいない。

全身に鳥肌が立った。

不安に駆られながらも、そのまま1階に降りることにした。エレベーターが静かに動き出し、今度は順調に1階に向かっていた…そう思った瞬間、またしても2階で突然止まった。

「もう勘弁してくれ…」

ドアが開くたびに、私は何かがそこにいるような感覚に襲われた。無人のエレベーターに乗るたびに、背後から冷たい視線を感じる。誰もいない空間に、確実に何か「存在」があるように感じたのだ。

それからというもの、毎晩エレベーターに乗るのが怖くなった。エレベーターが止まる度に、誰もいないはずの場所で、まるで見えない何かが行き来しているような感覚に襲われ続けた。

ある日、先輩警備員にその話をすると、彼は無言で頷きながらこう言った。

「俺も何度か同じ経験があるよ。エレベーター、誰も乗ってないはずなのに止まるんだ。でも、考えすぎないほうがいい。気にしたら負けだ。」

それ以来、私は深夜のエレベーターが止まることを気にしないようにしている。しかし、あの異様な感覚は今も忘れられない。エレベーターが止まる度、誰もいないはずの場所に何かがいる気配を感じるのだ。

あれが何だったのか、今でも答えはわからないままだ。



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