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怪しい会社が入居した老朽化ビルでの見回り:警備員が目撃した奇妙な生物 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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私が担当しているのは、老朽化が進んだ小さなオフィスビルだ。エレベーターはぎしぎしと音を立て、廊下の壁紙は剥がれ、空室のフロアが多いせいか昼間でも不気味な静けさが漂っている。入居している会社もどこか怪しい。普通のオフィスビルにはありえない名前や事業内容の会社ばかりで、正直なところ、何をしているのかよくわからない。

ある日、そのビルにまた新しい会社が入居してきた。その会社名もまた、どこか引っかかるような妙な名前だった。社名を見た瞬間「これはまた怪しい会社だな」と思ったが、しばらくして、その会社から見回りの依頼があった。依頼内容は、通常の夜間見回りと変わらず、オフィスのドアを解錠し、室内を確認して異常がないかをチェックするというものだった。

「怪しい会社名の割に、こうやってちゃんと見回りの依頼をするってことは、案外まともな会社かもしれないな」と、その時は思った。

依頼があったその夜、私はその会社のオフィスに向かった。ビルの5階、他のフロアはほとんど空室で、5階に入居しているのはその会社だけ。エレベーターを降りて、廊下を進むと、異様な静けさが漂っていた。

オフィスのドアを解錠し、中に入った瞬間、私は違和感を覚えた。

オフィス内は普通のオフィスとは全く違っていた。デスクやパソコンなどのオフィス機器は一切なく、代わりに部屋の中央には奇妙なガラスケースが鎮座していた。ケースの中には、見たこともない物体や装飾品が並んでおり、それらが何かの儀式に使われているような印象を与えていた。

「…やっぱり、まともな会社じゃないな…」

その考えが頭をよぎった瞬間、私はさらに奇妙なものを見つけた。

ガラスケースの横には、一匹の大きなイモムシがゆっくりと蠢いていた。今まで見たこともないほど巨大なイモムシで、長さは30センチほどあり、体は異様に太く、光沢のある黒と緑のまだら模様が特徴的だった。

「なんだ、この生物…?」

そのイモムシの隣には、さらに奇妙な哺乳類がいた。まるで現実の生物とは思えない姿をしていて、体は犬ほどの大きさだが、顔は人間の赤ん坊のように見え、背中には小さな突起が並んでいた。目が大きく、まるで何かを考えているような瞳でこちらをじっと見つめていた。

やがて、見回りのたびに、そのイモムシと哺乳類を観察するのが日課になっていった。毎回同じ位置にいるのか確認し、気になる異変がないかをチェックする。最初はただ気味悪いだけだったが、次第にそれが不安感に変わっていった。

ある夜、いつものようにオフィスを見回っていると、イモムシが微かに膨張しているように見えた。まるでその体が呼吸をしているかのように、少しずつ膨らんでいる。そして、その体の一部がわずかに光っているようにも見えた。これは見間違いかと思い、目をこすって再度見ても、その光は確かに存在していた。

次に哺乳類を確認した時、背中の突起が微かに動いているのを感じた。まるでその生物が成長しているかのように、突起が少しずつ大きくなっているようだった。そして、その瞳が今まで以上に鋭く、知性を持った何かを感じさせる視線で私を捉えていた。

「…これ、何なんだ?」

私はその場を離れたが、背中に冷たい汗が流れた。普通の生物とは明らかに違う、何か異質な存在感がオフィス全体に漂っていた。

さらに数日が経った夜、私は再びそのオフィスを見回っていた。イモムシと哺乳類は変わらず同じ場所にいたが、今度はイモムシの体から小さな触手のようなものが伸びているのを目にした。まるで成長の過程を見せつけられているかのように、それは徐々に形を変え、より異様な姿になっていく。

哺乳類も変わらずこちらを見つめていたが、その瞳には以前よりも強い光が宿っていた。まるで何かを伝えようとしているかのように、意思を持った目で私をじっと見ていた。

その夜、私は見回りを終えると、もうこのオフィスには足を踏み入れたくないという思いが強くなった。あのイモムシと哺乳類が何なのか、そしてなぜそんな奇妙な生物がそこにいるのか、答えはわからないままだった。

あの会社が何をしているのか、何を研究しているのかは一切明かされなかったが、ただ一つ確かなことは、普通ではない何かがこのビルの中で進行しているということだ。



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