俺が高校生だった頃の夏休み、地元の友達3人と山奥の小さな集落に泊まりに行くことになった。友達の祖父母が住んでいる場所で、都会からはずいぶん離れた田舎だ。古い家が点在するだけで、商店も何もない静かな集落だった。
到着したのは夕方で、集落はどこか沈んだ雰囲気だった。祖父母の家に入ると、すぐに友達のおばあさんが俺たちを見てこう言った。
「今夜は外に出ちゃいけないよ。特別な夜だからね。」
特別な夜? 何のことかわからなかったけど、友達も「昔からこの集落では夜に外に出るなって言われてるんだ」と教えてくれた。特に何かがあるわけじゃないが、昔からそういう言い伝えがあるらしい。
俺たちはその話を聞いて、少し怖くなったが、せっかく来たんだし気にせずに夜を過ごそうと思っていた。しかし、夜になってから何かがおかしいことに気づいた。
夜10時を過ぎた頃、集落全体が不気味なくらい静かだった。風の音すら聞こえない。そして、家の外からカサカサと何かを引きずるような音が聞こえ始めた。まるで何かが地面を引きずって歩いているような音だ。友達は「気にするな」と言うが、その音はどんどん近づいてくる。
気になって窓の隙間から外を覗いた時、俺は信じられない光景を目にした。
集落の広場に、白装束を着た人々が集まっていた。全員が無言で、ゆっくりと歩きながら何かを運んでいる。それは大きな箱のようなもので、中に何かが入っているようだ。彼らは広場の中央にその箱を置くと、一斉に周りを囲み始めた。
「儀式だ…」友達が震えた声で言った。「昔、この集落では災厄を避けるために、毎年夏に生け贄を捧げる儀式が行われてたって聞いたことがある。でも、そんなのもうやってないはずなのに…」
俺たちはパニックになり、急いで窓を閉めた。だが、その時、外から誰かが玄関を叩く音が響いた。「開けろ」という低い声が聞こえる。振り返ると、祖母が真剣な表情で俺たちに言った。「絶対に開けちゃダメだ」
ドンドンと玄関を叩く音は激しくなる。窓の外では儀式が進んでいるようで、何かを祈るような低い声が広がっていった。俺たちは怖くて動けなかったが、そのまま夜が明けるまで耐えた。
翌朝、あの白装束の人々も、広場に置かれていた箱も跡形もなく消えていた。友達の祖母に尋ねても、「何も知らない」としか答えなかった。
あの夜、俺たちが見たものは一体何だったのか。儀式は本当に終わっているはずなのに、あの集落では今も毎年、何かが捧げられているのかもしれない…。
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