私が担当しているオフィスビルは、老朽化が激しい。エレベーターのドアはきしみ、廊下はところどころ剥がれたタイルが露出している。こんなビルだから、入居者も少なく、多くのフロアが空室だ。昼間でも薄暗く、どこか廃墟のような雰囲気が漂っている。
さらに、そのビルに入っている会社も、怪しい会社ばかり。怪しげな事業内容や、不自然な社名を掲げているオフィスが多く、特に気味が悪いのが最近入居した霊感商法的な会社だった。社名は伏せるが、その名前からして「何かを売りつけるための商売」であることが明らかだった。
ある日、管理会社から「その霊感商法の疑いがある会社の見回りをお願いしたい」と連絡があった。契約上、時々入居会社から深夜の見回りを依頼されることがあるが、普通は高級商材を扱う会社など、商品や資料を守るための依頼だ。
だが、今回はあの怪しい会社からの依頼だった。
「…本当にあの会社の見回りをやるのか?」
私は正直気が進まなかったが、業務命令なので断るわけにはいかない。その夜、私はその会社のオフィスのドアを解錠し、中を見回ることになった。
深夜、ビルの中はいつも以上に静かだった。私は重たい気持ちを抱えながら、そのオフィスのドアを開けた。
中に入ると、まず目に飛び込んできたのは、不気味な光景だった。
部屋の中央には、大きな木製のテーブルがあり、その上にはヘビの剥製が鎮座していた。長い体がリアルすぎて、今にも動き出しそうだった。他にも、棚には骸骨人形が無造作に並べられており、それらの目がこちらをじっと見つめているかのようだった。
私は一瞬、息を呑んだ。
「何なんだ、この会社は…」
その部屋に足を踏み入れた瞬間から、空気が重く冷たい。奥へ進むと、壁際の棚に並んでいるものが目に留まった。そこには、ホルマリン漬けされた謎の生物が瓶に収められていた。何なのか見当もつかないが、小さな手足がついた何かの胚のようなものもあった。
さらに、テーブルの端には人形のようなものが置かれていたが、それは単なる人形ではなく、まるで呪術に使われるような形状をしていた。手には小さなナイフが握られており、目は赤く光って見えた。
私は見回りのため、オフィスの奥へ進んだが、背後に何かの気配を感じた。振り返っても何もいない。ただ、全身に冷たい風が吹き抜けるような感覚があった。胸騒ぎを抑えながら、見回りを続けたが、気味の悪いものばかり目に入る。
さらに驚いたのは、棚の上に鎮座している大きな彫像だった。彫像は、人間の形をしているが、顔は異常に歪み、手には何かの生き物の骨が握られていた。それを見た瞬間、私は足がすくみ、しばらく動けなくなった。
その時、カチッ…カチッ…と何かが動く音が聞こえた。
私は驚いて音のする方向を見たが、何もいない。しかし、音は明らかに近づいてくる。怖くなった私はすぐにその場を離れ、オフィスの出口へ向かったが、背後から音がついてくるような感覚に襲われた。
振り向くと、入口のところに置いてあった骸骨人形が、なぜか倒れていた。
「さっきまでは立ってたはず…」
手に汗が滲み、私はオフィスを飛び出し、急いでドアを閉めた。その瞬間、背中から冷や汗が噴き出した。
その夜以来、私は二度とそのオフィスの見回りを引き受けたくないと思った。あのオフィスに何があるのか、なぜそんな気味の悪いものばかりを集めているのかはわからない。だが、あの部屋には何か異常な存在感があった。
それから数週間後、その会社は何の前触れもなく突然引っ越していった。結局、彼らが何をしていたのかは誰も知らないままだ。ただ、あのオフィスにいた時の不気味な気配と、骸骨人形の倒れていた光景は、今でも忘れられない。
あの夜、私が感じたのは何だったのか。今もその答えはわからない。
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