大学生の私は、授業が少ない時期に少しでもお金を稼ぎたくて、アルバイトの求人サイトをよく見ていた。ある日、短期間で高時給のバイトを見つけた。仕事内容は「夜間の倉庫管理」で、シンプルな作業だと書かれていた。深夜に働くのは少し不安だったが、時給が非常に良く、しかも週に数回だけで済むので、私はすぐに応募した。
ただ、応募した後も妙な違和感が残っていた。会社名が覚えづらい上に、募集の内容が曖昧だったからだ。「倉庫管理」という割には何を扱っているかが全く記載されていないし、場所も、街外れにある古い建物だった。しかし、私はお金に目がくらんでしまい、深く考えずに面接に行った。
面接の日、私は指定された場所に向かった。会社が入っている建物は、かなり老朽化した倉庫で、外観からして不気味だった。周囲に人の気配はなく、人気のない暗い通りを歩いていくうちに、次第に不安が募ってきた。
中に入ると、受付の男性は意外にもフレンドリーで、すぐに私を案内してくれた。面接も簡単なもので、「夜間の作業だけど、特に難しいことはないよ。古い商品を保管しているだけだからね。」と説明された。
その後、簡単な説明を受けて、すぐにバイトが決まった。作業は、主に倉庫内の商品の点検や、翌日に発送するものの梱包作業だという。夜間の作業とはいえ、内容自体は単純で、私も安心して引き受けた。
初日、夜の9時から作業が始まった。倉庫に入ると、まず感じたのは、異様な静けさだった。広い倉庫の中に積まれている商品は、すべて布で覆われていて、何が置かれているのかは一目ではわからない。私は作業指示を受け、布をめくって中の商品を確認し始めた。
そして、その瞬間、私は息を飲んだ。
そこに置かれていたのは、大小様々な人形だったのだ。日本人形、西洋人形、さらには布でできた奇妙な人形まで、あらゆる種類の人形がズラリと並んでいた。何体もの人形が、ガラスケースの中で、じっとこちらを見つめているかのようだった。
「これが…商品の点検…?」
私は不安を感じながらも、指示通りに人形たちを一つずつ点検していった。割れていないか、傷がないかを確認し、何も問題がなければ梱包を行う作業だ。作業自体は簡単だが、倉庫の暗さと静けさ、人形たちの無表情な顔が、徐々に私を不安にさせていった。
特に、ある人形が目に入った時、私は思わず足を止めた。
その人形は、異様にリアルな表情をしていた。まるで生きている人間のように精巧に作られており、顔には微かな表情が浮かんでいた。それが、見れば見るほど不気味な微笑みに見えてきたのだ。
作業が進むにつれ、私は次第に奇妙な感覚に襲われ始めた。倉庫の中で、誰もいないはずの場所から、何かが動く音が聞こえる。振り返っても、誰もいない。ただ、人形たちがじっとこちらを見つめているだけだ。
ある時、作業をしている最中、ふと感じたのは視線だった。周りを見回すと、私が点検していた人形の一体が、先ほどとは違う方向を向いていることに気づいた。
「…そんなはずないよな」
私は自分の気のせいだと思い、再び作業に戻った。しかし、その夜中、何度か同じことが起こった。人形の位置が少しずつ変わっている。まるで、何かがそれを動かしているかのように。
バイトを始めてから数日が経った頃、ついに私はあることに気づいた。
作業を終えて帰ろうとすると、倉庫の奥に置かれた布をかぶった人形から、笑っているような気配を感じたのだ。恐怖に駆られ、私はその場を逃げ出すように倉庫を後にした。
バイトは短期間だったが、私はその数日間で、何度も同じ不気味な体験を繰り返した。人形たちは常に無表情であるはずなのに、時折見せるかのような微笑み。夜中の倉庫に響く、誰もいないはずの物音。すべてが現実とは思えない恐怖を引き起こした。
バイトが終わると、会社の人から「お疲れ様」と言われ、簡単なお礼とともに帰されるだけだった。報酬は確かに良かったが、二度とあの倉庫に戻りたくはない。
そのバイトが一体何だったのか、そしてあの人形たちは一体何だったのか。答えはわからないが、ただ一つ確かに言えることは、もう二度とあの場所で働きたくないということだ。
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