診察室は、静かな音楽と落ち着いた空気に包まれていた。しかし、今日の患者は明らかに緊張していて、座る姿勢にも不安が見て取れた。定期的な診察の質問を終えた後、彼女は少し声を震わせながら話し始めた。
「先生、最近、ずっと同じ夢を見るんです。それが……本当に怖くて。」
私は彼女の不安を感じ取り、優しく促した。
「どんな夢なんですか?話してみてください。」
彼女は深呼吸をして、夢の内容を語り始めた。
「夢の中で、私は調査員として呪われた人形を観察しているんです。その人形は、厳重なケースに入れられていて、誰も近づかないようにされています。最初はただ、人形を観察しているだけだったんですが、毎日夢を見るたびに、人形に少しずつ変化が起きていることに気づくんです。」
彼女の声には、明らかに恐怖がにじみ出ていた。私はその変化について詳しく知りたくなり、さらに質問した。
「人形には、どんな変化があったんですか?」
「最初は、髪の毛が伸びているのに気づきました。最初は短かった髪が、日に日に少しずつ伸びてきて……最初は気のせいかと思ったんですが、毎日見ているうちに、確実に伸びているんだって気づいたんです。」
彼女はその瞬間を思い出し、少し震えるような声で続けた。
「それだけで十分不気味だったんですけど、ある日、夢の中で観察している時に……人形の目が動いたんです。じっとケースの中にいたはずなのに、ふと気づくと、その目が私の方をじっと見ていて……本当に動いたんです。」
私はその時の感覚がどれほど強烈だったのかを感じ取り、さらに深く聞いてみた。
「その目が動いた時、どんな気持ちになりましたか?その瞬間、何を感じましたか?」
「恐怖で体が固まってしまいました。『こんなの夢だ』って自分に言い聞かせても、目が動いたのを確かに見てしまったんです。しかも、じっと見つめてくる視線がただの人形の目じゃなくて……まるで意思があるような感じがして。それが一番怖かったんです。」
彼女は言葉を絞り出すように話し続けた。
「それで、翌日の夢では、さらに恐ろしいことが起きました。人形が……少し動いていたんです。ケースの中で確実に前日の位置からズレていて、しかも体の向きも少し変わっているんです。人形が自分で動いたとしか思えなくて……もうそれが怖くてたまらないんです。」
彼女の恐怖が次第に強まっていくのを感じながら、私はさらに質問を続けた。
「その人形が動いていたのを見た時、どう感じましたか?現実と夢の区別はついていましたか?」
「最初は夢だってわかっていたんですけど……それが毎日続くうちに、現実か夢かわからなくなってきました。人形が動くたびに、『これが本当に夢なのか?それとも現実に起きていることなのか?』って混乱するようになってきて。もう、夢の中で起きることが現実に影響を与えているような気がして……。」
彼女はその混乱を感じているようだった。私はその夢の意味について探るために、さらに問いかけた。
「人形が動いているというのは、もしかすると現実で何かにコントロールされている感覚や、不安定な状況を反映しているのかもしれません。最近、何か不安やストレスを感じることがありましたか?」
彼女はしばらく考え込み、静かに答えた。
「確かに、最近仕事で大きなプロジェクトを抱えていて、すごくプレッシャーを感じています。何かに追われているような感覚があって……そのストレスが夢に現れているのかもしれないですね。人形が動くたびに、まるで自分の生活もどんどん制御が効かなくなっているような気がして。」
彼女は夢の中での恐怖が、現実でのストレスとリンクしていることに気づき始めていた。
診察室を出る彼女を見送りながら、私はその夢が彼女の内面的な不安やコントロールを失っている感覚を映し出しているのかもしれないと考えた。呪われた人形の変化――髪が伸び、目が動き、少しずつ位置が変わる姿は、彼女の心の中に潜む恐怖と不安を象徴しているようだった。彼女がこの夢を通じて自分の心の中を整理し、再び安定を取り戻す日が来ることを願っていた。
■おすすめ
マンガ無料立ち読み
1冊115円のDMMコミックレンタル!
人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】
ロリポップ!
ムームーサーバー
新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp
ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |