大学生のFさんとその友人たちは、夏休みを利用して小さな田舎町へ旅行に出かけました。都会の喧騒から離れ、のんびりとした時間を過ごすため、彼らは観光名所や美しい自然を巡り、写真を撮りながら楽しいひとときを過ごしていました。旅は順調で、観光地を巡るたびに仲間と笑い合い、賑やかな雰囲気が続いていました。
ある日の午後、町の中心部から離れた小さな道を歩いていた時のことです。のんびりと進むうちに、彼らはいつの間にか目的地から外れた道に入り込んでしまいました。周囲には見慣れない景色が広がり、次第に町の喧騒から遠ざかっていることに気づきました。
「ここ、どこだろう?」と誰かが呟きましたが、特に心配する様子もなく、むしろ皆は「ちょっと探検してみよう!」と興味を持ち始めました。冒険心に駆られ、彼らは歩き続けました。やがて、視界に古びた廃屋が現れました。
その廃屋は、窓ガラスが割れ、壁もところどころが崩れかけており、明らかに何年も放置されている建物でした。周囲には雑草が生い茂り、人気のないその場所は不気味な雰囲気を漂わせていました。誰かが「幽霊屋敷みたいだな」と冗談を言い、みんなは笑いながら「写真を撮ろう!」という話になりました。
「せっかくだし、記念にこの廃屋をバックに写真を撮ろうよ」とFさんが提案しました。冗談半分、怖さ半分で、友人たちは廃屋をバックに並び、Fさんがスマートフォンで写真を撮りました。その瞬間も笑顔でふざけ合い、特に異変を感じることはありませんでした。
その後、彼らは元の道に戻り、楽しい旅行を続けました。廃屋での写真は、単なる悪ふざけとして軽く扱われ、特に気に留めることもなく、写真はそのまま保存されました。
「何か、おかしくない…?」
旅行が終わり、しばらく経ったある日、Fさんは自宅で旅行の写真を整理していました。スマートフォンに保存されていた数々の楽しい思い出を振り返りながら、友人たちと撮った写真を見ていました。そして、廃屋をバックに撮った写真をふと開いた瞬間、彼の手が止まりました。
「え…?」
写真をじっと見つめるFさんの胸に、嫌な寒気が走りました。最初は見逃していたのですが、改めて写真をよく見ると、廃屋の窓という窓から「顔」が覗いていたのです。
その顔は、明らかに異様なものだった。割れた窓ガラスの隙間から、無表情の顔がいくつも浮かんでいました。どの顔も、まるで彼らの写真を撮る瞬間を見ているかのように、じっとこちらを見つめていたのです。しかも、それは一つの窓だけではなく、廃屋のすべての窓から「顔」が覗いていました。
目が合うと背筋が凍るような感覚に襲われ、Fさんは急いで他の友人たちにもこの写真を送りました。「お前ら、この写真、何かおかしくないか?」とメッセージを送り、写真を共有すると、すぐに返事が返ってきました。
「やばい、これ…誰だよ、廃屋にひとなっていなかったぞ」
「何これ、怖すぎる…」
「ふざけてないよな…?」
友人たちも同じくその写真に違和感を覚え、ざわめきました。誰も気づかずに撮った一枚の写真に、いくつもの見知らぬ顔が映り込んでいたのです。まるで廃屋の中に潜む何かが、彼らをじっと見つめていたかのように。
その瞬間、Fさんは背筋が凍るような恐怖を感じました。誰も気づかないうちに、彼らは「何か」に見られていたのです。その事実に気づいた瞬間、写真を見た全員が一斉に沈黙しました。
Fさんの記憶からは、あの廃屋の窓から覗き込んでいた「顔」が消えることはありませんでした。
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