インターホンの恐怖
主人公のHさんは、郊外のマンションで一人暮らしをしていました。築年数はやや古いものの、静かな環境で、周囲には緑も多く、彼はその部屋に満足していました。生活は平穏で、仕事から帰ってきてのんびりと自宅で過ごす時間が、Hさんにとっての癒しの時間でした。
ある夜、Hさんは仕事を終え、いつものようにリビングでリラックスしていました。部屋は暖かく、テレビを観ながらコーヒーを飲んでいた時です。突然、インターホンが「ピンポーン」と鳴りました。
「誰だろう、こんな時間に?」
時刻は夜の11時過ぎ。こんな遅い時間に訪ねてくる友人はいないはずです。不審に思いながらも、Hさんはインターホンのモニターを確認しました。マンションはオートロック式で、来訪者があればモニターにその姿が映る仕組みです。
しかし、モニターに映し出されたのは「誰もいない」玄関の映像でした。
「おかしいな…」
Hさんは、もう一度モニターをじっと見つめました。玄関先には誰も立っておらず、ただエントランスのドアと階段が静かに映っているだけでした。「いたずらか?」と思い、Hさんは一旦その場を離れました。
しばらくすると、また「ピンポーン」とインターホンが鳴りました。今度は少し警戒しながら、再びモニターを確認しました。しかし、やはり誰も映っていません。
Hさんは不安を感じ始めました。「いたずらにしても、なんだか気味が悪いな…」と思いながら、玄関の外を覗こうか迷いました。だが、深夜に誰もいないはずの場所でインターホンが鳴り続けていることに、次第に恐怖が募ってきました。
その時です。「ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!」と、今度は連続してインターホンが鳴り始めました。Hさんは慌ててモニターを確認しましたが、相変わらず誰も映っていません。まるで、誰かがすぐそこに立っているかのようにインターホンを押し続けているのです。しかし、姿は見えない。
心臓がドキドキと高鳴り、手にじんわりと汗がにじんできました。Hさんはインターホンの音を無視しようとしましたが、鳴り続ける音に耐えられなくなり、ついに意を決して玄関のドアを開けることにしました。
玄関に向かい、慎重にドアのチェーンをかけたまま少しだけ開けて外を覗きました。薄暗い廊下にはやはり誰の姿もありませんでした。見渡す限り、ただの静かな廊下が続いているだけです。
「誰もいない…」
恐怖を感じながらも、Hさんはドアを閉めました。そして、念のためドアの鍵を二重にかけ、しばらくその場に立ち尽くしました。
その夜は、インターホンが鳴ることはもうありませんでしたが、Hさんはそのまま眠れず、ずっと緊張したまま過ごすことになりました。
後日談
翌日、Hさんはマンションの管理人にその出来事を話しました。すると管理人は首をかしげ、「そんなことは今まで一度も聞いたことがないですね」と言いました。管理人室には防犯カメラが設置されており、映像を確認できるとのことで、Hさんは前日の夜の記録を見せてもらうことにしました。
録画映像には、Hさんの部屋のインターホンが鳴った時刻の様子が映し出されていました。画面に映っていたのは、無人のエントランス。
誰も、そこにいなかったはずでした。
しかし、その数秒後、画面の端に「何か」が一瞬映り込んだのです。映像は不鮮明で、はっきりとは見えませんでしたが、まるで人影のようなものがカメラの視界を横切ったかのように見えました。その影は、ほんの一瞬、モニターの前に現れ、次の瞬間には消えていたのです。
Hさんはその映像を見て、背筋に冷たいものが走るのを感じました。それが何であったのか、誰かが本当にそこにいたのか、それとも何か別の存在だったのかはわかりません。しかし、あのインターホンの音が、ただのいたずらではなかったことだけは確信していました。
それ以降、Hさんのインターホンが鳴ることはなくなりましたが、彼は今でも夜になると、時折玄関先を見つめてしまうそうです。あの時、見えなかった何かが、今も自分を見ているのではないかと感じるからです。
■おすすめ
マンガ無料立ち読み
1冊115円のDMMコミックレンタル!
人気の漫画が32000冊以上読み放題【スキマ】
ロリポップ!
ムームーサーバー
新作続々追加!オーディオブック聴くなら - audiobook.jp
ページをめくってゾッとする 1分で読める怖い話 [ 池田書店編集部 ] 価格:1078円 |