Hさんは、新しいマンションに引っ越してきたばかりでした。築浅の綺麗なマンションで、周囲の環境も良く、これから始まる新生活に期待を寄せていました。引っ越し作業も無事終え、広々とした新しいリビングでリラックスしていると、ふと気がつきました。そういえば、隣の部屋の住人にはまだ挨拶をしていない。今夜にでも挨拶に行こうと思いながら、荷解きを進めていました。
その夜、Hさんは少し疲れた体を癒すために早めに休むことにしました。静かな夜が訪れ、彼は深い眠りに落ちていきました。
しかし、夜中、突然インターホンの音が響きました。
「ピンポーン…ピンポーン…」
Hさんは寝ぼけながらインターホンの音に気づき、時計を見ると深夜2時を回っていました。「こんな時間に一体誰だろう?」と疑問を抱きながら、リビングにあるインターホンのモニターを確認しました。
モニターに映し出されたのは、どうやら隣の部屋の住人のようでした。彼は少し焦った様子で、こちらを見つめています。
「すみません、隣の部屋の者ですが、助けてください…少しお話ししたいことがあります。今すぐ、隣に来てもらえますか?」
困惑したHさんは、「一体何があったのだろう?」と思いながらも、隣人の様子が緊迫していたため、すぐに隣の部屋に行くことにしました。寝ぼけまなこをこすりながら玄関のドアを開け、隣の部屋のドアの前に立ち、インターホンを押しましたが返答がありません。
次はドアをコンコン、と軽くノックしましたが、返事はありません。少し不安になりながら、再びノックをしましたが、やはり返答はありません。
「おかしいな…」
不安を感じつつも、ドアノブを軽く押してみると、驚いたことにドアは鍵がかかっておらず、ゆっくりと開きました。中を覗くと、部屋の中は暗く、誰もいる気配がありませんでした。静まり返った部屋には、わずかな風が通り抜け、カーテンが揺れていました。
「さっきの人はどこに行ったんだ…?」
Hさんは部屋の中へ声をかけようとしましたが、部屋の中は異様なほど静かで、冷たい空気が漂っているのを感じました。少しだけ足を踏み入れて部屋を確認しようとしたその時――
「ピンポーン…ピンポーン…」
――再びインターホンの音が鳴り響きました。
Hさんの部屋のインターホンが鳴っているようでした。しかし、自分の部屋のドアの前には自分しかいません。Hさんは驚いて部屋を見回しましたが、やはり誰の姿も見当たりません。しかし、自分の部屋のインターホンからもが鳴り続けていました。
不気味に感じながら、Hさんは慌てて自分の部屋に戻ることにしました。部屋に戻ると、インターホンのモニターに再び隣人が映っていました。今度は顔色がさらに青白く、何か恐怖に駆られているようでした。
「お願いです、助けてください…隣の部屋で何かが…早く…」
モニター越しの隣人は、明らかに何かを恐れている様子でした。息を荒げ、焦りの表情が浮かんでいます。しかし、Hさんは再び隣の部屋に行くことができませんでした。自分が先ほど訪れた時に見た、あの誰もいない暗い部屋の光景が、どうしても頭から離れなかったのです。
「誰かいるのか? 本当に?」
不安と恐怖が入り混じる中、モニターの中の隣人は今にも消えてしまいそうなほど怯えた表情で、何かを訴え続けていました。
「助けてください…早く、早く…」
しかし、その声は次第に遠ざかり、画面に映る隣人の姿も徐々にぼやけていきました。モニターはまるで砂嵐のようにノイズがかかり始め、やがて画面は真っ暗に。
Hさんは恐怖に駆られながら、何が起きているのか理解できないまま、モニターを見つめ続けました。しかし、それ以来、隣の部屋から助けを求める声が聞こえることはなくなりました。次の日、Hさんはマンションの管理人にこの出来事を話しましたが、驚くべき事実を聞かされました。
「隣の部屋には、もう誰も住んでいませんよ。以前住んでいた方は、数ヶ月前に急に引っ越してしまったんです。ここ最近は空き部屋のままです。」
Hさんは呆然としました。では、昨夜見た隣人の姿は何だったのか? インターホン越しに助けを求めていた声は、一体どこから来たものなのか?
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