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霊感を持つ男アキラが語る、夜中に壁を引っかく音…隣から聞こえる恐怖の正体 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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いつもの喫茶店で、私とリョウはアキラの話を待っていた。彼の語る体験談には、突拍子もない中に常に現実感が伴っている。今回は、少し緊張した面持ちでアキラが話し始めた。

「今日は、あるアパートに引っ越してきた男性からの依頼の話だ。最初はただの騒音の問題だと思っていたが、次第にそれがただの音じゃないとわかってきた。」

「依頼主は、30代半ばの男性。彼は最近、あるアパートに引っ越してきたばかりだった。場所も静かで家賃も手頃だったし、最初は快適に過ごしていたらしい。だが、引っ越してからしばらくして、夜中に壁を引っかくような音が聞こえるようになったんだ。」

リョウが少し眉をひそめて聞いた。「引っかく音って、どんな感じだったんだ?」

「まるで、爪で壁をガリガリと削っているような音だそうだ。最初は、隣の部屋の住人が何かしているのかと思ったらしい。夜中になるとその音が始まり、寝られなくなるほどだった。管理会社に連絡して、隣の住人に確認してもらったんだが、なんとその隣人も同じように『隣から壁を引っかく音が聞こえる』と言っていた。」

私とリョウはその話を聞いて、背筋が寒くなった。

「つまり、依頼主も隣人も、お互いに『隣から音が聞こえる』と思っているわけだ。音の発生源がどちらか一方じゃないことが、すぐにわかった。管理会社が調査に入ったが、結局原因はわからなかったんだ。壁の中にも異常はなく、配管や電気系統にも問題はなかった。」

アキラは少し肩をすくめた。

「それでも音は毎晩続く。依頼主は気味が悪くなって、引っ越しを考え始めたが、どうしても原因が知りたくて俺に相談してきた。正直、騒音の問題は俺の専門外なんだが、状況を聞くうちにこれはただの音じゃないと感じた。だから、彼のアパートに行って調べることにした。」

「そのアパートに入った瞬間、空気が違うことに気づいた。静かすぎるんだ。昼間にも関わらず、まるで音が吸い込まれてしまうような異様な静寂があった。俺は依頼主に案内されて、彼の部屋に向かった。」

アキラはその時の不気味な感覚を思い出しながら、話を続けた。

「部屋は普通の1Kの間取りで、特に何の異常もなさそうだった。だが、壁を見た瞬間、何かがおかしいと感じた。壁紙は一見きれいだったが、よく見ると微かに何かが削られたような跡があったんだ。それも、爪で引っかいたような、細かい筋が何本も。」

リョウが身を乗り出した。「それって…霊的なものか?」

「まだ確信はなかったが、何かが壁を触っているのは明らかだった。そして夜、例の時間が近づいてくると、突然その音が始まった。ガリガリ、ガリガリ…。まるで誰かが壁の向こうで爪を立てて、ひっかいているような音が響いた。俺はすぐに壁に手を当ててみたが、冷たいだけで特に異常はなかった。ただ、音だけが鳴り続けていた。」

アキラの話に、私とリョウは緊張が走った。

「その時点で、俺はすぐに原因を探るために霊的な方法を使って調査を進めた。そして、ある瞬間、何かが引っかかってきた。これは、過去にこの場所で何かあったか、何かがこの壁に埋もれているとしか思えなかった。俺は依頼主に、そのことを説明し、できる限り早く浄化する必要があると伝えた。」

「結局のところ、霊的な力で浄化を行ったんだ。その後、壁をもう一度調べてみると、音が消えた。まるで何かが解放されたかのように静まり返ったんだ。」

「依頼主も、その後は壁の引っかく音を聞くことはなくなった。隣人も同様に音が止まったと言っていた。だが、あの音の正体が何だったのか、完全にはわからないままだ。」



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