喫茶店で、私とリョウはまたアキラの話を聞きに集まった。いつものように、アキラは静かにコーヒーをすすり、少し考え込むような表情で口を開いた。
「今回は、ある意味で非常に不気味な依頼の話だ。霊的なものかどうか最初はわからなかったが、次第にそれが普通じゃないってわかってきた。」
私とリョウは黙ってアキラの言葉に耳を傾けた。
「依頼が来たのは、一人暮らしをしている女性からだった。彼女は深夜の2時になると、必ずインターホンが鳴ると言うんだ。それも、毎晩だよ。最初はただのいたずらかと思っていたらしいが、誰もインターホンを押していない。モニターを確認しても、そこには誰も映っていないんだ。」
アキラは少し苦笑いを浮かべた。
「最初は俺も、機械の故障だろうと思ってた。実際、そういうことはよくある。古いインターホンだと勝手に誤作動してしまうこともあるからな。でも、彼女が言うには、毎晩同じ時間、決まって2時に鳴るって言うんだ。これはちょっと気味が悪い。で、彼女の部屋に行くことになった。」
「部屋自体はごく普通のマンションの一室だった。築年数は少し古いが、特に異常は感じなかった。俺はまず、インターホンの故障を疑って、彼女に確認したが、業者にも点検してもらった結果、問題はなかったらしい。」
アキラはコーヒーを一口飲んでから続けた。
「俺が部屋に来たその夜、ちょうど2時にインターホンが鳴ったんだ。彼女と一緒にモニターを見たけど、そこには誰も映っていない。外は真っ暗で、マンションのエントランスは静まり返っている。だが、確かにインターホンは鳴り続けていた。」
私とリョウはその瞬間、鳥肌が立った。
「モニターには誰も映っていないが、深夜2時のインターホンがなったあとのモニターは、微妙に画面が揺れるのがわかった。まるで空間が歪んでいるような感じだった。俺はその異常さを感じ取ったが、彼女にはそれが見えていなかった。そこで俺は、もう少し詳しく調べることにした。」
「翌晩もインターホンが鳴った。同じ時間、2時だ。その時、俺はふと思ったんだ。この鳴り方は何かを知らせているんじゃないか、と。俺は彼女に話を聞き、過去に何かあったかを確認した。彼女は最初は思い当たることがないと言っていたが、少し話すうちに、ふと彼女があることを思い出したんだ。」
リョウが興味深そうに前のめりになった。「思い出したって、何を?」
「彼女は、数年前にこのマンションで一度、深夜に奇妙な出来事を体験したことがあったと言うんだ。その夜も同じ時間、深夜2時。彼女が引っ越してきて間もない頃のことだ。部屋に引っ越してきたばかりの夜、突然インターホンが鳴った。モニターを確認すると、そこには誰もいない。それが何度か続いて、その時はただのいたずらだと思っていたらしい。」
アキラは少し声を潜めた。
「だが、その後、彼女はマンションの住人からある話を聞いた。かつて、このマンションのエントランス付近で事故があったらしい。深夜2時、ある若い男性が突然道路に飛び出して、車にひかれたという。」
私とリョウはその話を聞いて、背筋が凍るような感覚を覚えた。
「その時点で、俺はこの現象が偶然じゃないことを確信した。彼女の部屋に何かしらの形で、その事故の影響が残っていると感じた。俺は彼女に、このインターホンの鳴る時間が、その事故の瞬間を再現している可能性が高いことを伝えた。」
「じゃあ、その事故にあった人が…?」リョウが思わず聞いた。
「ああ、可能性としては、事故で亡くなった人が何かを伝えようとしているか、単にその時間が繰り返されているんだろう。だが、その人が何を伝えたいのかはわからない。だから、俺は一度その部屋を浄化することにした。霊的なものが残っているかどうかを確かめ、必要なら除霊を行う準備をしたんだ。」
アキラは静かに話を締めくくった。
「その後、俺は知り合いの住職を呼んで部屋を浄化した。それ以来、インターホンは深夜に鳴ることはなくなった。彼女も安心して住み続けている。だが、その夜のインターホンが何を意味していたのか、結局のところ真相はわからない。」
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