怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

金縛りの夜に響く足音 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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それは、大学生の頃に私が一人暮らしをしていた時の話です。

引っ越したばかりのアパートは少し古びていましたが、家賃も安く、駅から近いという理由でそこに決めました。初めのうちは何も問題はなく、快適に過ごしていたのですが、ある夜から奇妙な出来事が起こるようになりました。

その日は、特に疲れていたので、早めにベッドに入ることにしました。夜の静かな空気の中、すぐに眠りに落ちました。しかし、深夜、ふと目が覚めました。部屋は真っ暗で、時計を見ると夜中の3時を少し過ぎた頃でした。

「何で目が覚めたんだろう…」

体が疲れていたはずなのに、なぜか目が冴えてしまい、すぐに眠れそうになかった。すると、急に全身が重くなり、まるで何かが体に乗りかかってきたかのように動けなくなりました。

「金縛りか…」

私は何度か金縛りを経験したことがありましたが、今回は異様に重苦しい。息苦しさすら感じ、まるで何かが私を押さえつけているかのようでした。目は開けられるのに、体は一切動かず、ただベッドに縛りつけられているような感覚が続きました。

その時――足音が聞こえてきたのです。

最初は気のせいだと思いました。静かな部屋の中で、微かにコツ…コツ…とゆっくりした足音が響いてきたのです。それは、まるで廊下を誰かが歩いているような音でした。最初は遠くで聞こえていた足音が、次第に近づいてくるのがわかりました。

「誰かが…歩いている?」

私は一人暮らしで、この部屋には誰もいないはず。深夜に誰が歩いているのか、そもそも私の部屋の中に誰かがいるわけがない。そんなはずはないと思いつつも、足音は徐々に部屋の中へ近づいてきました。

コツ…コツ…

足音は、部屋の入口付近からこちらに向かってきています。私の心臓は早鐘のように打ち始め、全身に冷や汗がにじみました。動けない体の中で、ただ音がどんどん近づいてくるのを感じるだけ。息が詰まり、恐怖が全身を支配していました。

足音は、ベッドのすぐそばで止まりました。

「…誰かが…いる…」

しかし、体を動かそうにも、金縛りにかかっているせいで動くことができない。目だけは開けているのに、視界には何も映っていません。だが、確かにそこに誰かの存在を感じる。

足音はもう聞こえなくなったが、その場に立ち尽くしている何かが私を見下ろしているような感覚に襲われました。冷たい視線を感じ、全身がさらに硬直しました。

「…お願いだから動いてくれ…」

心の中で何度も叫びながら、全力で体を動かそうとしました。すると、突然、金縛りが解けたかのように体が自由になりました。

私は勢いよく飛び起き、周りを見回しました。しかし、そこには誰もいません。足音も、視線も、すべて消え去っていました。

「何だったんだ…?」

鼓動が激しくなり、呼吸を整えながら部屋の中を確認しましたが、異常は何もありませんでした。ですが、あの足音は確かに聞こえ、誰かがそこにいた感覚も現実だったのです。

その夜、私はそのまま眠ることができず、朝までベッドで起きていました。あの足音と、私を見下ろしていた気配――それが何だったのか、今でもわかりませんが、それ以来、私はあの部屋で再び金縛りに遭うことはありませんでした。

ただ一つ、あの時に感じた異様な足音の恐怖は、今でも忘れられません。



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