今からもうかなり前、まだネットやスマホが普及しておらず、人々が映画やアニメを楽しむためにレンタルビデオ店へ通っていた時代のことです。亮太(りょうた)は、地元の小さな個人経営のレンタルビデオ店でアルバイトをしていました。店は商店街の外れにあり、昼間はそれなりに人が訪れるものの、夜になるとほとんど客が来なくなります。
亮太は学校が終わった後、夕方から閉店時間の夜10時まで一人で店番をすることがよくありました。特に大きなトラブルもなく、静かで穏やかな仕事でしたが、ある日、彼の身に奇妙で不気味な出来事が起こり始めました。
目次
不気味な深夜の出来事
その日はいつも通り、亮太は一人で店番をしていました。夜9時を過ぎた頃、店内はさらに静かになり、少し寂しさを感じながら店内の整理をしていました。その時、入り口付近のドアが、カタンと音を立てました。来客かと思ったのですが、誰もいないのに突然音がしたのです。
「風かな?」と最初は気にしませんでしたが、ドアは閉まることなく、わずかに開いたまま。亮太は店の外を確認しに行きましたが、誰もいません。気味が悪くなりつつも、特に異常はなかったため、そのままカウンターに戻りました。
その夜、さらに奇妙なことが起こりました。閉店準備をしていると、店内にあるテレビのモニターに急に砂嵐が現れたのです。普段なら新作の映画やお知らせの映像が流れているはずなのに、突然ノイズが走り、ざわざわと不気味な音が店内に響きました。リモコンを手にしても反応がなく、何をしても画面が戻りません。まるで何かが妨害しているかのように、映像は不安定なままでした。
「今日は変な日だな…」
亮太はそう呟きながらも、気を取り直して閉店準備を続けました。やがて10時を迎え、店を閉めようとすると、突然、背後で「カサ…カサ…」と何かが動く音が聞こえてきました。振り返ると、映画のパッケージが一枚、棚から静かに落ちていました。
心臓がドキッとした亮太は、一瞬誰かがいたのかと思い、店内を見回しましたが、当然誰もいません。店には亮太しかいないはずでした。それでも何かが確かに動いている、そんな気配が確かに存在していました。
亮太はその夜、急いで閉店作業を終え、店を出ました。背後から何か見えないものに見られているような感覚を抱きながら、帰路についたのです。
祖母の助け
翌日、亮太はその不気味な出来事を思い出し、誰かに話そうか悩みました。両親に話しても「ただの気のせいだろう」と片付けられそうで、友達に話しても冗談にされるのが目に見えていました。しかし、亮太はこのまま放っておくことができず、思い切って祖母に相談することにしました。
祖母は昔から少し不思議な力を持っていると言われており、家族の間でも霊感が強いと噂されていた人物でした。亮太が祖母にすべてを話すと、祖母は静かにうなずき、「それは、この世のものじゃないかもしれないね」と一言。
亮太がゾッとするのを感じる中、祖母はお守りをひとつ差し出しました。それは、小さな赤い布に包まれた古いお守りで、手作りのようなものに見えました。
「これを店に持っていきなさい。店に入るとき、ポケットに入れておくんだよ。それから、毎日必ず帰る前に『ありがとう』と言ってから出ること。それだけで、もう怖い思いをしなくなるはずだから」
亮太は半信半疑でしたが、祖母の言葉に従うことにしました。
その後…
次の日、亮太はお守りをポケットに入れて店に向かいました。その夜もまた、店番は一人です。夜9時を過ぎても特に異常はなく、静かな時間が過ぎていきました。
いつもなら奇妙な音や動きが気になっていたはずの時間帯でしたが、祖母のお守りを持っているという安心感からか、亮太は不安を感じることなく、作業を続けられました。そして、閉店時間が近づいた頃、亮太は祖母の言いつけ通り、静かに「ありがとう」と呟いてから店を出ました。
その日から、あの奇妙な出来事は一切起こらなくなりました。ドアが勝手に動くことも、棚からビデオが落ちることも、モニターにノイズが走ることもなく、亮太のバイトは再び穏やかで平凡なものになりました。
祖母のお守りが本当に効いたのか、それとも単なる偶然だったのかは分かりません。しかし、亮太はそれ以来、何か見えない存在に守られているような感覚を持ち続けていました。彼は改めて、祖母に感謝の気持ちを抱くのでした。
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