ある夏の日、大学生の裕也(ゆうや)とその友人たちは、肝試しに行こうと決めました。目的地は地元で有名な心霊スポット――山の奥にひっそりと佇む、廃れた神社の跡地です。その場所は、かつて火事で焼失し、以来地元の人々からは「呪われた神社」として恐れられていました。夜になると、不気味な音や白い影が出ると噂されており、心霊マニアには有名な場所でした。
裕也たちは、少しの恐怖と好奇心に駆られ、夜中にその神社へ向かいました。到着すると、辺りはすっかり暗くなり、木々がざわめく音と、風の音だけが耳に響きます。空気はどこか冷たく、重い不安感が漂っていました。
「ここ、本当にやばいんじゃないか?」と、友人の一人が怯えた声を上げましたが、裕也は「大丈夫だよ、ただの噂だろ?」と軽く笑い飛ばし、先頭に立って神社の跡地へ進んでいきました。
目次
不気味なお守り
神社の跡地は、見るからに荒れ果てていました。かつて立派だったであろう鳥居は崩れ、境内には雑草が生い茂り、木々の影が不気味に揺れています。裕也たちは手分けして周囲を探索していましたが、ふと、裕也は足元に何かが光るのを見つけました。
「なんだこれ…?」
彼が拾い上げたのは、小さなお守りでした。古びてはいるものの、不思議な光沢を放っていて、なぜかその存在感が強く、裕也の目を引きました。布地は黒ずんでおり、どこか汚れているようでしたが、奇妙な力を感じさせるものでした。
友人たちに見せると、「それ、やばいんじゃないか?こんな場所でお守り拾うなんて…」「放っておいたほうがいいよ」と、皆が口々に忠告しました。しかし、裕也は「ただの古いお守りだろ?」と軽くあしらい、そのお守りをポケットに入れて持ち帰ることにしました。
その夜の異変
家に帰った裕也は、疲れていたこともあり、そのままお守りを忘れ、すぐに眠りにつきました。しかし、その夜から不気味な出来事が始まりました。
夜中、ふと目が覚めると、部屋の中が異様に静まり返っていることに気づきました。耳を澄ますと、何かが床を這うような音が微かに聞こえてきます。「ざッ…ざッ…」という音が、まるで誰かが這い回っているかのように部屋の隅から響いてきました。
裕也は布団の中で固まり、心臓がドキドキと早鐘を打つのを感じながら、なんとか音の正体を確認しようとしましたが、怖くて動けませんでした。そして、次の瞬間、耳元で「カサ…カサ…」と、何かがさらに近づいてくる音が聞こえてきたのです。
恐怖に耐えきれず、裕也は一気に体を起こしましたが、部屋の中には誰もいません。気味が悪くなった彼は、翌朝そのことを友人に話しました。しかし、友人たちは「疲れてるんだよ。心霊スポットなんか行ったから、怖い夢でも見たんだろ」と取り合いませんでした。
悪夢の連続
それからというもの、裕也の周囲で奇妙な出来事が頻繁に起こるようになりました。夜中に足音や囁き声が聞こえたり、部屋の中に誰もいないはずなのに、冷たい視線を感じたりするのです。特にお守りを拾った日から、悪夢を見続けるようになりました。
夢の中では、いつも廃れた神社の跡地に戻っており、誰かが背後からじっと見つめているような感覚に襲われます。その気配は次第に近づき、夢の終わりには必ず不気味な笑い声が響き渡ります。その度に裕也は汗だくで飛び起き、朝を迎えるのです。
裕也は次第に疲れ果て、日常生活にも支障が出るようになりました。彼はもう耐えられず、祖母に相談することにしました。祖母は昔から霊感が強く、家族の間でも不思議な力を持つと噂されていた人物です。
祖母の忠告
裕也が祖母に事情を話すと、祖母は真剣な表情で「それはただ事じゃないね…」と呟きました。そして、彼が拾ってきたお守りを見た瞬間、祖母の顔色が一気に変わりました。
「これは…普通のお守りじゃない。どこで拾ったんだ?」
裕也が心霊スポットで拾ったことを話すと、祖母はすぐにお守りを布に包み、丁寧にしまい込むと、こう言いました。「そのお守りは、誰かの強い念が込められている。このままだと、もっとひどいことが起きるかもしれない」
裕也は驚きつつも、祖母の指示に従うことにしました。祖母は近所の神社でお祓いをしてもらうよう勧め、そのお守りを二度と持ち帰らないよう念を押しました。
その後…
裕也は祖母の言葉に従い、地元の神社でお祓いをしてもらい、お守りは処分しました。それ以降、夜中の奇妙な音や悪夢に悩まされることはなくなり、いつもの平穏な日常が戻ってきました。
あの心霊スポットで拾ったお守りは、いったい何だったのか。裕也は今でも考えることがありますが、もう二度とその場所には足を運ぼうとは思いません。
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