友人たちと一緒に、地元の心霊スポットで有名な廃墟の豪邸に肝試しに行った。山奥にひっそりと佇むその豪邸は、かつて地元の名士が住んでいたというが、ある時から突然廃墟となり、何年も放置されている。
その家では「夜になると住人たちの姿が見える」や「帰れなくなる」という噂が絶えない。
怖い話が苦手な私は、最初から行きたくなかったが、友人たちに半ば無理やり連れて行かれた。
夜9時、私たちはその豪邸に到着した。外観はひどく荒れていて、壁は剥がれ、窓は割れ、屋根には蔦が絡みついている。それでも、玄関ドアは大きく立派で、廃墟とは思えないほどの存在感を放っていた。
「すごいな、ここ…本当に人が住んでたのか?」
「やべぇな、マジで心霊スポットって感じじゃん」
友人たちは興奮気味だったが、私は不安で胸がざわついていた。何かがこの家にまだ取り残されているような、嫌な気配が漂っていた。
玄関を開けると、湿った冷気がまとわりついてきた。中は思った以上に広く、吹き抜けの天井に大きなシャンデリアがぶら下がっていた。だが、何もかもが朽ち果て、静まり返っている。
「ちょっと奥も見てみようぜ」
友人たちは先へ進むが、私は一歩踏み出すたびに背筋が寒くなるのを感じていた。廊下には古い絨毯が敷かれ、ところどころ家具が散乱している。明らかに誰かが急いで家を出たような気配があるのだ。
奥に進むと、やがて大きな応接間が現れた。そこには、豪華なソファと大理石のテーブルが置かれており、壁には無数の肖像画が飾られていた。その肖像画は、どれもこちらをじっと見つめているようで、不気味だった。
「なぁ、ここって誰か住んでた形跡が残ってないか?」
「まるで昨日まで使ってたみたいだな…」
その時――
パタッ…パタッ…
背後で足音が聞こえた。
「今の…誰だ?」
全員が固まって振り返ったが、そこには誰もいない。私たちは不安を抱えながらも、さらに探索を進めた。やがて見つけたのは階段だ。上階に行くべきか迷ったが、友人たちが「せっかくだから行こう」と言い、仕方なくついて行くことにした。
階段を上がると、さらに不気味な廊下が広がっていた。両側には寝室が並んでおり、どの部屋も扉が半開きになっている。その静寂が、何かが今でもこの家に潜んでいることを感じさせた。
私たちが廊下を進んでいると、突然――
「アハハハハッ!」
友人の一人が笑い出した。
その笑い声は異常だった。顔を見ると、不自然な笑顔を浮かべ、目は焦点が合っていない。まるで別人になったかのように狂ったように笑い続けている。
「おい、どうしたんだよ!」
「やめろって、怖いから!」
必死に声をかけても、彼は笑い声を止めない。その笑いはどんどん大きくなり、私たちはパニックに陥った。
「逃げるぞ!」
私たちは狂ったように笑い続ける彼を置いて、豪邸の出口に向かって走り出した。だが、彼は笑いながら追いかけてきたのだ。
「アハハハハハッ!」
足音がどんどん近づいてくる。その笑い声は異常なほど高く、まるでこの世のものとは思えない響きだった。私たちは全力で廊下を駆け抜け、玄関へ向かった。
ようやく玄関の扉を開け、外に飛び出した瞬間、彼は突然バタリと倒れた。
「おい、大丈夫か!?しっかりしろ!」
慌てて駆け寄ると、彼の顔は真っ青で、呼吸も浅い。それでも少しずつ意識を取り戻し、やがて目を開いた。
「…え? 何があったんだ?」
彼は廃墟の豪邸を訪れた記憶が全くないと言った。私たちは呆然としながらも、その場を後にした。
帰り道、彼は何度も「何があったんだ?」と聞いてきたが、私たちは何も答えられなかった。豪邸で見たあの異常な笑顔と、狂った笑い声は、今でも耳に残っている。
一体、あの時彼に何が起こったのだろうか――
今でも答えはわからない。ただ一つ言えるのは、あの豪邸には何かがまだ残っているということだ。
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