地元で有名な心霊スポットの廃病院に、友人たちと一緒に肝試しに行くことになった。廃墟と化したその病院は長い間放置され、そこで不可解な現象が起こるという噂が絶えなかった。「院内で亡くなった患者の霊が出る」とか、「入った者は二度と戻れない」など、数多くの怖い話が広がっていた。
正直、私はあまり気乗りしなかったが、友人たちの「行こうぜ!怖くないから!」という言葉に押され、結局ついて行くことにした。
夜の廃病院は思った以上に不気味だった。外観は崩れかけ、窓ガラスは割れ、蔦が絡みついている。月明かりの下でその姿はまるで何かが待ち構えているかのように見えた。私たちは懐中電灯を手に、恐る恐る病院の中へと足を踏み入れた。
中はひんやりと冷たく、湿った空気が漂っていた。壁には剥がれたポスターが貼られ、診察室や病室の扉が無造作に開け放たれている。ところどころに転がっている医療器具は埃をかぶり、まるで時間が止まったような静けさが漂っていた。
「ここ、やっぱやばいだろ…」
「怖がるなって!何も出ねえよ!」
そう言いながらも、友人たちもどこか落ち着かない様子だった。私たちは一列になって廊下を進み、薄暗い病室や診察室を探索した。
しばらくして、私たちが院内の奥へと進んでいると、突然――
「アハハハハハハッ!!」
一人の友人が大声で笑い出した。
その笑い声は異様で、私たちは一瞬固まった。友人を見ると、彼は見たこともないような笑顔を浮かべ、狂ったように笑い続けている。
「おい、どうしたんだよ!」
「やめろよ、怖いって!」
だが、彼は私たちの声には全く反応せず、ひたすら笑い続けていた。その笑顔は普段の彼とはまるで別人のようで、不自然なまでに口角が引きつり、目が虚ろだった。
「ヤバい…ここ、本当に何かいるんじゃないか?」
恐怖が全員を包み、私たちは逃げるように病院の出口へ向かった。
しかし、笑い声を上げ続けた友人が、今度は私たちを追いかけてきた。
「アハハハハッ!」
彼は笑いながら私たちの背後を追い、異常なスピードで近づいてくる。
「逃げろ!ヤバい、ヤバいって!」
私たちはパニックになり、必死に廊下を駆け抜けた。廃墟特有の不安定な床を走り抜け、割れたガラスや散乱した器具を踏み越えながら、とにかく外へと急いだ。足音と不気味な笑い声が背後から響き、全身に冷たい汗が滲んだ。
ようやく病院の出口が見えた時、友人の笑い声が急に止まった。振り返ると――彼は笑い続けたまま、突然バタリと倒れたのだ。
「おい!大丈夫か!?」
慌てて駆け寄り、彼の肩を揺さぶるが、反応はない。笑い続けていた彼の顔は蒼白で、今にも息が絶えそうなほど弱々しかった。
その後、私たちは彼を支えながら病院の外へ運び出した。夜風が冷たく、月明かりが静かに照らす中で、彼はようやく意識を取り戻した。
「おい、大丈夫か?」
「…え?何が…?」
彼は目を覚ましたものの、廃病院を訪れた記憶は全くないと言う。むしろ、何が起こったのか理解できていないようだった。
「俺、どうしてここにいるんだ?」
私たちは混乱したまま、彼を車に乗せてその場を離れた。帰り道、彼はぼんやりと外を見つめていたが、何度問いかけても病院の中での出来事を覚えていないと言い張った。
それ以来、私たちは二度とあの廃病院に近づいていない。彼もすっかり元に戻ったが、あの時の異様な笑い方と、虚ろな目の表情が今でも忘れられない。
あの時、彼は一体何に取り憑かれていたのか――それとも、彼の中に何かが入り込んでいたのか?
答えはわからない。ただ一つ確かなのは、あの病院には何か得体の知れないものが今も残っているということだ。
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