それは、友人たちと心霊スポットとして有名な廃墟を訪れた時のことだった。地元の山奥にひっそりと放置され、昔は誰かの別荘だったらしいが、今では長い間使われることもなく、廃墟になっているという。噂によれば、「夜中に人の声が聞こえる」や「帰る時に見つけたものを持ち帰ると呪われる」という話がある。
私たちはそんな噂を面白がり、夏休みのある夜、肝試しにその廃墟へ行くことになった。
夜9時頃、車で山道を走り、ようやくその廃墟にたどり着いた。家は崩れかけており、壁はひび割れ、窓ガラスは割れ、蔦が絡まっている。月明かりがその姿をぼんやりと浮かび上がらせ、廃墟特有の静けさが辺りを包んでいた。
「うわぁ…本当に入るのかよ」
「せっかくだから中まで行こうぜ」
私は何となく嫌な予感がしていたが、ここまで来て引き返すわけにもいかず、友人たちと一緒に懐中電灯を持って廃墟の中へと足を踏み入れた。
玄関の扉は壊れかけていて、軽く押しただけで開いた。中に入ると、埃っぽい空気とカビの匂いが鼻をついた。家具や家電はそのまま放置されていて、誰かが突然姿を消したかのようだった。
「ここ、誰か住んでたまんまじゃん…」
「なんか、時間が止まってるみたいだな」
私たちは家の中を探索し始めた。リビングには古いテレビとソファが置かれ、台所には使われなくなった鍋や皿が散らばっている。全てが不気味な静けさに包まれていた。
2階に上がると、そこで古いラジカセを見つけた。埃にまみれていたが、カセットが中に入ったままになっていることに気がついた。
「うわ、これ動くかな?」
「ちょっと再生してみようぜ!」
私は嫌な予感がしたが、友人の一人がラジカセの再生ボタンを押してしまった。
最初は、ただの雑音のようなノイズが流れただけだった。しかし、しばらくすると――
「……だれか……いますか……」
かすれた声が、イヤなほどはっきりと聞こえた。それは、助けを求めるような、怯えた女性の声だった。
「……ここから……出して……」
全員が凍りついた。廃墟の中で見つけたカセットテープに、どうしてこんな声が録音されているのか? ただのいたずらだと自分に言い聞かせようとしたが、心臓が高鳴るのを止められなかった。
その時――
2階の廊下から「コツ…コツ…」と誰かが歩く音が聞こえた。
「おい、誰かいるのか?」
友人がそう叫んだが、返事はない。だが、足音は徐々に近づいてくる――階段をゆっくりと上がり、こちらに向かってきている。
「ヤバい!早く逃げよう!」
全員がパニックになり、慌てて1階へと駆け下りた。だが、逃げ出す直前――私は、なぜかあのカセットテープを持ち出してしまった。
車に乗り込み、全員で廃墟を後にしたが、誰も何も言わなかった。ただ、あの足音と、カセットに録音されていた女性の声が頭から離れなかった。
家に帰ってからも、私はカセットを捨てることができなかった。何かが気になってしまったのだ。深夜、意を決してもう一度ウォークマンにテープを入れ、再生してみることにした。
再生ボタンを押すと――
「……戻ってきてくれて、ありがとう……」
その声は、まるで私に語りかけているようだった。
「……でも、もう逃がさない……」
その瞬間、ウォークマンの電源が勝手に切れた。だが、イヤホンの中では、まだ何かの気配が続いていた。
「……ずっと、ここにいるよ……一緒に……」
私はパニックになり、カセットを引き抜き、ベッドの上に投げ捨てた。しかし、その夜、耳元でかすかな囁き声が聞こえた。
「……戻ってきて……また、会おうね……」
それ以来、私はあのテープをどうすることもできず、家の奥深くに封印してしまった。だが、時々思うのだ――もしあの廃墟に戻らなければ、あの声はどうなっていたのか、と。
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