地元の心霊スポットとして有名な豪邸の廃墟に、友人たちと肝試しに行ったのは、夏休みのある夜のことだった。豪邸は、山奥にひっそりと放置されていて、昔は地元の名士が住んでいたと言われているが、いつの間にか一家は姿を消し、家も放棄されたという。
それ以来、その場所は「夜になると人の声が聞こえる」とか、「持ち帰ったものが呪われる」という噂が広がり、心霊スポットとして知られるようになった。
夜10時過ぎ、私たちは車で山道を抜け、豪邸の前にたどり着いた。月明かりの下でその洋館を見上げると、壁はひび割れ、窓ガラスは割れ、蔦が絡まっている。その古びた姿は、まるで今にも何かが出てきそうな不気味な雰囲気を漂わせていた。
「うわ、これ本当に人が住んでたのか?」
「まぁ、入ってみようぜ。面白そうじゃん」
不安を抱えながらも、私たちは玄関の扉を押し開け、豪邸の中に足を踏み入れた。
中は埃まみれで、家具や調度品がそのまま残されていた。テーブルの上には割れたティーカップ、床には散乱した本や写真立て――まるで住人が急に姿を消したかのようだった。
「何か持って帰ったら呪われるって噂、マジかな?」
「おい、そういうのやめろって。怖いだろ…」
私たちは笑いながらもどこか落ち着かない様子で、リビングや寝室を探索した。そして、私がふと書斎の奥で古いカセットテープを見つけた。
「おい、これ見てみろ。昔のカセットだ」
埃を払うと、テープには何も書かれておらず、ただの無地だった。何が録音されているのか分からないが、持ち帰って聞いてみようという話になった。
家に戻り、私たちは早速そのカセットをラジカセに入れて再生することにした。友人の部屋に集まり、全員でドキドキしながら再生ボタンを押した。
最初は、ただのノイズが流れるだけだった。
「なんだ、ただの壊れたテープか?」
そう思った瞬間――
「……聞こえてる……?」
イヤホンから女性のか細い声が漏れ出た。
全員が無言になり、互いの顔を見合わせた。ノイズ混じりのその声は、怯えたように、どこか悲しげだった。
「……ここは、どこ……帰れない……助けて……」
その声は、まるで誰かがどこかに閉じ込められ、助けを求めているようだった。そして、ノイズの合間に、何かを叩くような音が混ざる――
コン…コン…コン……
「……これ、録音じゃないよな?」
「やばいだろ、これ…消そう!」
慌てて停止ボタンを押したが、再生は止まらなかった。ラジカセはまるで勝手に動いているかのように、再生を続けた。
「……こっちに、来て……一緒に……」
その声が続いた瞬間、部屋の温度が急に下がった。まるで誰かが私たちを見ているような気配がした。
「おい、捨てよう! このテープ絶対ヤバい!」
全員が怯え始めたその時――
パタン……
部屋のドアがゆっくりと閉まった。
「誰も触ってないよな!?」
心臓が飛び出しそうになりながら、全員が固まった。ラジカセからはまだ、あの声が続いている。
「……もう、逃げられない……ずっとここに……」
その瞬間、ラジカセが急に停止した。そして、部屋は不気味な静寂に包まれた。全員がしばらくの間、何も言えなかった。
「……このテープ、捨てよう」
全員が無言で頷き、そのカセットテープを外して袋に入れた。そして、翌日すぐにゴミ捨て場に持って行った。
しかし――
その夜、友人のスマホに奇妙な着信があったという。非通知の番号からで、出ると、かすかにあの女性の声が聞こえたそうだ。
「……なんで捨てたの……? 一緒にいられるのに……」
それ以来、私たちは豪邸の話を二度としなくなった。誰もそのカセットテープのことに触れないし、あの豪邸に近づこうとも思わない。
だが――
夜になると、あのコン…コン…という音が耳の奥で聞こえるような気がして、私は未だに安心して眠ることができない。
もしかしたら、あのカセットに録音されていたのは、今も豪邸のどこかに閉じ込められている誰かの声だったのかもしれない。そして、私たちがテープを持ち帰ったことで、何かがついてきてしまったのだろう。
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