怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

廃校で撮れた不思議な写真 怖い話 奇妙な話 不思議な話 短編集

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その廃校は、地元の山奥にひっそりと放置されていた。長い間誰も立ち入らず、風化した校舎がそのまま残っている。学校が閉鎖された理由については、いくつかの噂があるが、真相は誰も知らない。ただ、「夜に入ると、二度と帰ってこられない」や「撮った写真に見知らぬ人が写る」という怖い話がよく語られていた。

そんな廃校を心霊スポットとして訪れるのが、その夜の私たちの目的だった。

友人3人と一緒に、懐中電灯を持って廃校に向かったのは夜10時過ぎ。月明かりが薄っすらと照らす中、見上げた廃校は異様な威圧感を放っていた。壁は崩れ、窓ガラスは割れ、校庭には雑草が生い茂っている。風が通り抜けるたびに、校舎全体がかすかにきしんでいるのがわかった。

「これ、入るのかよ…」
「せっかく来たんだから行くしかないだろ!」

友人たちは強がっていたが、私たち全員が不気味な雰囲気に飲まれていた。

校舎の中に入ると、長い廊下が続いていた。埃とカビの匂いが鼻をつき、古びた掲示板には黄ばんだプリントや落書きが貼られたままになっている。

「これ、ほんとにそのまま放置されてんだな…」

私たちは1階から順番に探索を始めた。教室には古い机や椅子が散乱し、床には誰かが落としたであろうノートや教科書が残されていた。まるで生徒たちが急に姿を消したかのような異様な光景だった。

「おい、写真撮っとこうぜ。帰ったら自慢できるぞ」

友人の一人がスマホを取り出し、廊下や教室の写真を次々に撮り始めた。

2階に上がると、図工室と書かれたプレートが目に入った。扉を開けると、そこには古びた絵の具セットや粘土の道具、半完成の彫刻が散乱していた。部屋の奥には、児童の作品らしき絵が何枚も貼られていたが、そのほとんどが人の顔を描いたものだった。

「なんだよこれ…全部、同じ顔?」

その顔は、子供が描いたにしては不気味なほどリアルで、どれもじっとこちらを見つめているかのようだった。しかも、顔の表情がどれも違う――怒っている顔、泣いている顔、笑顔。でも、その笑顔すらどこか異常で、背筋が寒くなった。

その時、友人がスマホを構えて言った。

「記念に撮っておくか」

彼がシャッターを押した瞬間――

パシャッ

その音と同時に、誰もいないはずの廊下から足音が聞こえた。

「おい、今の音…」

全員が固まったまま、廊下を見つめた。誰もいないはずの廊下の奥から、かすかな気配が近づいてくる。

「やばい、もう帰ろう!」

私たちは慌てて図工室を飛び出し、階段を駆け下りた。廊下を全力で走り抜け、出口に向かう。背後からは、何かがついてきているような気配がする。誰も振り返る勇気がなかった。

ようやく外に飛び出し、全員が息を切らして座り込んだ。
「おい、今の何だったんだよ…?」

全員が恐怖で顔を青ざめていた。その時、友人が震える手でスマホを取り出し、先ほど撮った写真を確認し始めた。

最初の何枚かは普通の教室や廊下の写真だった。だが、図工室で撮った写真を見た瞬間、全員が言葉を失った。

そこには――

私たちの姿が写っていた。だが、そこにいるのは私たちだけではなかった。

私たち4人の後ろ――図工室の奥の暗がりの中に、一人の生徒が立っていたのだ。彼は白いシャツを着て、無表情でこちらを見ている。

「……こいつ、誰だ?」

その子供は、写真の中で確かに立っていた。だが、あの時、図工室の中にそんな子供はいなかった。

さらに不気味だったのは、その子供が私たちの後ろで同じ顔の絵の前に立っていたことだ。まるで、その絵が彼自身であるかのように。

「おい、これ消せよ!ヤバいって!」

友人は震える手で写真を削除しようとした。だが――

削除ボタンを押しても、写真は消えなかった。

何度やっても、同じように写真が残り続けていた。そしてその写真を何度も見返していると、彼の顔が少しずつ変わっていることに気がついた。

最初は無表情だった子供が、だんだんと笑顔に変わっていくのだ――だが、その笑顔はどこか異常に引きつっていた。

「おい、やばいって!もう帰ろう!」

全員がパニックになり、急いで車に乗り込んだ。そのまま廃校から全力で逃げ出したが、車を走らせている間も、友人はスマホを何度も見返していた。

「おかしい…なんで消えないんだよ…」

そして、ついに最後の写真を確認した瞬間――

その子供は、画面いっぱいに笑顔でこちらを見つめていた。

それ以来、友人はそのスマホを処分したが、時折「誰かが後ろから見ている」という感覚に襲われるという。そして彼は、あの写真に写っていた子供が今でもどこかで自分を見つめているのではないか、と怯えている。

あの子供は一体何だったのか――そして、なぜ写真の中で少しずつ笑顔に変わっていったのか。

その答えは、今でもわからない。



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