いつもの喫茶店で、私とリョウはアキラの話に耳を傾けていた。だが、今日のアキラはいつもよりも険しい表情をしていた。話の切り出しが少し重かった。
「今日話すのは、今までの中でも妙な依頼だ。正直、あれにはどう関わるべきか、少し迷ったんだ。」
「依頼が来たのは、ある40代の男性からだった。彼は、俺に直接カセットテープを持ってきたんだ。その時の彼の様子は尋常じゃなかった。顔色が悪く、目の下には深いクマができていて、まるで何かに取り憑かれているようだった。」
アキラはその時の光景を思い出しながら、少し間を置いて話を続けた。
「その男性は俺にこう言った。『このカセットを聞いてから、変なことが次々に起こるようになったんです。捨てても捨てても、なぜか戻ってくる。もう自分ではどうにもならないから、あなたに預けます』って。」
リョウが戸惑った顔で聞いた。「それで、その男はどうしたんだ?」
「俺にカセットテープを渡すと、彼はすぐに立ち去ってしまったんだ。まるで何かから逃げるように。俺が引き止めようとしたんだけど、顔も上げず、ただ『お願いします…』って言い残して、走るように帰ってしまった。」
アキラは、そのテープを手に取った時の感覚を話し出した。
「そのカセットテープは、見た目は古びていて、ラベルには何も書かれていなかった。普通のテープと変わらないはずなのに、手に持った瞬間、妙な冷たさを感じたんだ。まるで、ただの物じゃない何かがそこに宿っているような。」
私とリョウは緊張しながら聞いていた。
「俺はそのテープが何なのか気になって、再生してみることにした。古いウォークマンを引っ張り出してきて、ヘッドホンを付けて再生ボタンを押したんだ。最初は、何も音が聞こえなかった。ただの無音。でも、再生時間は確かに進んでいる。」
アキラは、その時のことを思い出しながらゆっくりと語った。
「しばらくすると、低いノイズのような音が聞こえ始めた。ザザッ、ザザッという音に混じって、何かが遠くで囁いているような声が聞こえたんだ。『…オレ…シッテル…』『…ウシロヲ…』そんな風に、何を言っているのかはっきりしないけど、不気味な囁きが混じっていた。」
私とリョウは身震いした。
「そして、テープを聞いているうちに、突然背後に誰かが立っているような気配を感じたんだ。振り返っても誰もいない。だが、その気配は消えなかった。まるで、俺がテープを聞くのを見守っている何者かがいるようだった。」
「それで、どうしたんだ?」リョウが恐る恐る尋ねた。
「俺はテープを途中で止めた。これ以上聞いてはいけないと直感で感じたんだ。だが、その瞬間、ウォークマンの再生が勝手に始まったんだ。再生ボタンも押していないのに、テープが再び動き出した。そして、再生から流れてきたのは、さっきまでとは違う音だった。」
アキラは少し言葉を詰まらせた。
「聞こえてきたのは、俺の名前だった。はっきりと『アキラ…』って、誰かが囁くような声で。心臓が凍りつくような感覚だった。テープが俺に呼びかけていたんだ。俺はすぐにウォークマンの電源を切った。でも、ただ電源を切っただけじゃ、このテープの呪いは解けないと感じた。」
「翌日、俺はそのテープを持って知り合いの住職のもとに向かった。テープは普通の手段じゃ手放せないことはわかっていた。捨てても戻ってくるんだからな。俺は住職に事情を説明し、その場で供養をお願いした。」
「テープを供養するため、住職は念入りにお経を唱え、塩を撒いた後、火を使って焼却することにした。燃えないかもしれないと心配していたが、テープは音を立てて燃え尽きた。まるで、その瞬間に何かが解放されたようだった。」
リョウがほっとしたように言った。「それで、もう終わりか?」
「そう思ったが、終わったかどうかはわからない。」アキラは淡々と続けた。「テープは完全に燃えたし、依頼主もそれ以来何も起きていないと言っている。でも、あのテープがどこから来て、何が宿っていたのかは、結局わからずじまいだ。」
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